16歳 | ナノ

0902
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「さぁいこうぜ」

血で染まった鉄のパイプは地面に転がった。

そして可笑しな笑顔を浮かべた男は私の肩を引き寄せると、

強く抱きしめられる。

肩と腰に回った手の強さに思わず顔を歪めると、

それを見た男の表情は見開いた。

「なに?お前、なんだよその顔はよ!!!!!」

近くで叫んだ男の瞳は黒く染まっていた、人間なのに。

恐い、今まで寄ってきた男は皆最後は同じだった。

少しでも嫌な顔や歪めた顔をすれば、すぐに怒りをあらわにする。

「俺のこと嫌いなのか?言えよ、好きなんだろう?なぁ」

ふいに地面に押し倒されて、身体をまさぐられる。

抵抗すればもっとひどい目に合う。触れられる気持ち悪い手を見ないようにと

瞳を閉じれば。

大声で叫び出した男、それにゆっくりと瞳を開けば目の前に映ったのは青い炎だった。

「う、うがああぁっ!!!!」

青い炎で覆われた男は私の上から転げ落ちると苦しそうな声をあげて、

どんどん黒く染まっていく。

同時に近くに倒れていたさっき殴られた男も青い炎に覆われた。

黒くなっていく二人の男たちはまるであの彼岸花のようだった。

なぜ、なぜ…。

なぜあの青い炎なのか。ではあの白い手の持ち主はここにいるのだろうか。


「お前を好く者はおかしな男ばかりだ」

あの声が響いた。

それはすぐ後ろで、一瞬身体が揺らいだ、あまりにも近すぎる彼の距離、

私もまた青い炎に包まれるのだろうか。

「振り向くな」

「……、」

その声に振り向きかけた身体を止めた、すっかり黒くなった男たちを見つめて

私は口を開いた。

「助けてくれたの?」

「お前を喰らうのは俺だからな、人間ごときに汚されるわけにはいかない」

「……じゃあ、私を食べるのはやめたほうがいいよ、私はもうすっかり汚いから」

あんな体験は初めてじゃなかった、

今ままで飽きるほどにされてきた事だった。

だからもう、生きることに疲れていた。

「私、長い時を生きたの、人間じゃないね…でも人間に憧れていたから」

「……人間など愚かなだけだぞ」

「でも、自由な事をできる。長い時を生きることもない」

自分は人間ではないと分かっていた、

では一体なんなのか、知るのが怖くて。

自由ですぐに死んでしまえる人間が羨ましかった。

「俺も長い時を生きている」

「……辛くはないの?」

「辛くはない。だか俺の触れたものは青い炎に包まれ消えていく」

その声がひどく切な気に響いた。

自分と同じなような気がした。

でも彼の青い炎は優しい気がした。きらきら輝いている気がした。

「私、貴方の炎綺麗だと思う」

それは真実で正直な言葉だった。

黒かった私に世界に、ひとつの青い炎をついたのだ。

それは黒い世界を、優しく照らす光だと思った。



 

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