16歳 | ナノ
09011/4
「おい、雪男」
「…なんです?」
塾の授業後誰もいなくなった教室の中扉を開いて入ってきたのはシュラだった。
雪男はシュラのいつもの陽気な表情がないことに気づくと眉間にシワをよせた。
「NO NAMEは前から悪魔の影響を受けやすかったのか?」
「…ええ、よく熱を出していましたけど、あそこまではなかったですね」
あそこまで、とは意識がなくなった時のことを雪男は思い返していた。
思い出すだけで胸の中にある何かが渦巻く、それに雪男は瞳を細めた。
「アマイモンとの接触がそこまで影響するか?確かにアマイモンは相当の力を持った悪魔だが」
「そうですね、何かあったんじゃないでしょうか」
何かあったならばすぐに僕に言うはず。昔はそう思っていた雪男だったが、
今のNO NAMEが抱えている問題と重なり合うと、
NO NAMEは何かあっても絶対に話さないだろう、と思っていた。
「何が、あったんだと思う?」
「……そこまでは、」
ひどく気になるはずだった。
でも何も聞けない、またあの笑顔が変わってしまう気がするから。
雪男の胸の中では様々な想いが交差していた。
「最近NO NAMEはよく吐いているみたいだが、」
「吐き気…?身体にまだ異変が…?」
それが何を意味するのか、
答えはまだ明かされぬまま。
「そろそろですね」
雪男とシュラの話を扉の向こうで聞いていたメフィストの口元がつり上がった。
「彼女の謎が、明ける時はもうすぐ」
そして瞳を細めた。
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