16歳 | ナノ
08033/3
「っ…ふ、」
涙が止まらない、怖くてたまらない。
でもそれよりも他人の手が身体に触れることが許せなかった。
頭に焼き付いているのは夢で見たあの白い手。
まるで身体はあの白い手しか寄せ付けないようになっていて、
誰かの手が触れる度に心臓が跳ねる。
溢れる涙を止められない。
「貴方が泣いているところを見たいわけじゃなかったんです」
触れていた手を離したアマイモンは覆いかぶさっていた身体も引き離した。
「…私に、突き放してほしかった、の?」
とぎれとぎれに放たれる自分の言葉には確信がもてた。
それにアマイモンはまた無表情になると、小さく口は開いた。
「僕の声なんか届かないことを証明してほしかったんです」
「な、なんで……、」
「貴方から突き放されないと、僕は貴方を諦められない」
どうしてそこまで私のことを想うのか、
どうして悪魔が人間を好きになるのか。
「それは、私が特別な力を持っているからなの?」
悪魔を引き寄せる力、これを持っているからアマイモンは自分に好意を寄せるのか。
それとも勘違いしているだけなのか。
どっちにしろ虚しくなるものがあった。
「僕も分からない。僕が愛したのは貴方なのか、それとも元の貴方なのか」
それがどうゆう意味なのか、わからなかった。
だが急に頭が揺らぐと、視界は黒く染まった。
「ねぇ、君…これから遊ばない?」
「いい。」
「生意気言うなよ!!!」
つかまれた手に力が入る。そして引っ張られると同時に、
鈍器で殴られたような鈍い音がした。
それは私ではなくて、私を引っ張った男の音だった。
「ぐぁ…」
「俺の女に手を出してんじゃねーよ!!!」
もう一人の男は鉄パイプを持っていた。
そして血で染まるそれを投げ捨てると、私の方へ歩み寄る。
可笑しな笑顔を浮かべて。
「さぁ、いこうぜ」
あぁ、またか
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