16歳 | ナノ

0703
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一人病室の窓から学校の景色を眺めていた。

ぼーっとする意識の中で考えるのは、あのぼやけた視界に写った悪魔の姿。

アマイモン、地の王、アマイモン。

私は悪魔の影響を受けて倒れたと聞いた。あの時、あの遊園地にいたのはアマイモン

アマイモンの影響を受けて倒れたのならば、もっと前に倒れているはず。

だってアマイモンとは数階会っていたのだから。

遊園地で会ったあの人の表情はあの時と違かった。

縮まりかけた距離が一気に離れていくように、もう姿などみえないほどに。

何かが違っていた。

そして表情は変わらず無表情なのに、泣きだしてしまいそうな顔をしているようにみえるのはなぜだろう。

アマイモンは言った、“尊い存在”と“不完全と完全”確かにそう言った。

あの時は回転しなかった思考が回転し始めると、

だんだんその答えは黒く染まっていく。

不完全ってなに…完全ってなに、

そんな思いがぐるぐると頭の中で回って空回りしていく。

だんだんと重くなる空気の中扉が勢いよく開いた。

「奥村さんっ大丈夫ですか?!」

それは志摩君の声で、びっくりしていると一気に距離は縮められた。

そして手を両手で握られると、近い距離で目が合う。

「志摩君…」

「心配したんですよ?」

「……ご、めんね」

心配させたのは悪かったと心から誤ったつもりなのに、なぜか志摩君は頬が緩むように

微笑んでいた。そして段々と近くなる志摩君の顔に動けずにいたら、不意に大きな声が聞こえた。

「志摩!!!!何やっとんねんお前は!!!」

「坊っ、病室ですよ?!」

その距離に割り込んできたのは勝呂君で大きな声を出した勝呂君を止めたのは子猫丸君だった。

唖然としていると二人はふいにこちらを向いて、なんだかほっとしたように笑っていた

どうやらここにいる間ずっと心配してくれていたらしい。

お見舞いに何度も来てくれたらしいけど、まったく記憶がない。

「なんども志摩が寝込みを襲おうとして大変だったわ」

「眠れる森の美女にキスを…ですよ、坊」

「知らんわ!!!」

眠れる森の美女…キス…。

なんだか何かが引っかかる、そう思った瞬間に唇に感じたあの感覚を思い出した。

「どうしました?奥村さん」

「え、いやっ…別に…」

そういえば、あの時アマイモンにキスされた……、

なぜあんなことをしたのかわからないが、きっと何か目的があるはず。

だってアマイモンなのだから。

「後で杜山さんも来るらしいですよ」

「本当にっ?」

久しぶりのみんなとの会話に嬉しながらも、みんなより遅れている自分が

情けなくなった。

まだこの医療室に居なくてはならないので、その間にいっぱい勉強しなくちゃ。

「お、そろそろ授業始まるな」

「うん、今日はありがとう」

「すぐ戻ってください奥村さん」

「うん」

みんなが出ていくのを見送ると、傍にあったコーヒーに手を伸ばしかけた瞬間

またドアが勢い良く開いた。

「勝呂君?」

勝呂君だった、何も言わずずんずん近づいてくると、勝呂君の手は伸びて

私の鼻を詰んだ。

「な、なあに?!」

少し声が変わった自分の声に恥ずかしさを感じながらも勝呂君を見つめると

口を開いた。

「お前がおらんとあの奥村兄弟無駄に沈んで面倒だったわ!!」

「う、うん」

よく分からない顔をしていると、呆れた顔で手を離してくれた。

そしてため息をつくと、なんだか優しげな顔で笑ってくれた。

「早く戻ってこい、それだけや」

「……うんっ」

その言葉がなんだか嬉しくて、頬がゆるまる。

それに勝呂君は顔を赤くして照れながら病室を出ていった。


 

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