16歳 | ナノ
07011/5
頬に感じた冷たい感覚、次々と落ちてくるその白いものは私の身体を冷たくした。
ふと顔を上げれば空は白く染まっている、降り注ぐ冷たい雪が視界に溢れている。
手を伸ばせば届きそうな空はあんまりにも遠くて、伸ばした手を握り締めた。
溢れた冷たい感覚に手のひらを開くと、それは冷たい雪から冷たい水へと変化していた。
何かが落ちる音がした、それは赤く染まった彼岸花。
冬なのになんでこんな所にあるのだろうと、不可思議そうに眺めていれば。
彼岸花が落ちた横の木が揺れた気がした。
すると木の上の方、葉と雪が生い茂る中から白い手が伸びてきた、その手に握られているのは赤い花、彼岸花だった。
そして聞こえた声は今ままでに聞いたことのないような声だった。
「お前は誰だ」
その瞬間に視界は青い炎に包まれた。
それはまるで自分のもののようにフラッシュバックする映像。
青い炎はだんだんと赤くなっていく、そして最後に見えたものは。
恐ろしい、もの。
「起きてください」
凛と響いた声は見覚えのある悪魔の声だった。
深い海から引き上げられるように目を開くと、視界に慣れない天井がうつる。
まだはっきりとしない頭を動かせば傍にアマイモンの姿があった。
「アマイ、モン」
小さく名前を呟けば変わらぬ表情でアマイモンの口は開いた。
「貴方はまだ、不完全だ」
その言葉の意味が分からず、自分の状況も理解できないまま、
ただ呼吸をしていた。ぼやける視界に映るのはアマイモンのはずなのに
歪んでわけがわからなくなる。
「不完全、僕は貴方に完全になってもらいたいんです」
「…完全、ってなに」
不完全、完全。
それに頭は回転しなかった。ただひたすらぐるぐると何か回っているように、
赤いもので埋めつくされていくように。ゆっくりと、蝕まれる
「それは、僕の声なんか届かない、貴方の姿」
その声がすぐ近くで聞こえたと思うと同時に、自らの口元につけられていた酸素マスクが外された。
そして唇に柔らかく冷たい感覚が伝わる。
何が起こったか分からない頭は未だに覚醒しないまま、すぐ近くにある歪んだアマイモンを見つめていた。
そしてやがて遠くなる意識に身を任せた。
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