16歳 | ナノ

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「兄上」

「なんだ」

窓から兄上の部屋に侵入すれば、兄上の前に立った。

なんだか面白いものを見るような顔をした兄上に変わらぬ表情を向ければ、

鼻で笑われる。それにも気を向けず口を開いた。

「父上にはなんと報告しましょう」

その言葉に兄上は持っていたティーカップのバランスを崩しかけたが、

中に入っていた紅茶は溢れはしなかった。

息を抑えたような声を漏らした兄上の声と共に顔を上げたその表情は黒く染まっている

「アマイモン、お前も分かっているだろう…?」

「はい。」

分かっているそんなことは。きっと彼女の存在を知れば父上はこの世界を火の海に変える

それを隠していた兄上は消され、兄上に従ってきた僕も消されるだろう。

だからこそ、自分の存在のために、彼女に変わってもらわないと困るのだ。

自分の中で回っているこの感情を踏み潰してほしくて

否定してほしくて、ボロボロにしてほしいのだから。

「彼女が元に戻れば父上はお喜びになります」

それにまた怪しい笑顔を向けた兄上。

一口、持っていた紅茶を飲むと、息を吐いた。

「そう焦るな。思ったよりお前の揺さぶりが響いている」

「と、いうと」

揺さぶり、確かに彼女を試した。

あの力の理由が知りたくて、僕はほんの少しの軽い気持ちであの花を置いたのだ。

彼女の前に、あの、彼岸花を…。

父上が愛してやまないあの彼岸花を見た彼女は反応をしめした。

ざわつき始めていた心が急変した、一気に突き落とされたような思いでいっぱいになった

それと同時に、何かがまた湧き上がってくる。

そして彼女の体から出てきたあの結晶は紛れも無く彼女が“彼女”であることを証明するものとなった。

あの結晶を舐めれば僕の力は倍増するだろう、奥村燐など敵ではない。

軽く押しただけでいい、あいつは壁に埋もれて生きることを自分から止めるだろうから


「もうすぐ彼女は死ぬのだ。」

「死ぬ…?」

あの結晶で身体に変化が置き始めた。だんだんと蝕まれるように、

体の作りを変えていくように変化し始める。

そして彼女は死ぬのだ。

そして“彼女”が戻ってくる。

そう言った兄上の声はいつもと違っていた。

喜んでいるのか、それとも楽しくないのか分からないその声色に疑問を感じる。

そしてまた口を開いて僕に問いた質問に顔を歪ませられることになるとは

思いもしなかった。



「お前が愛したのは、彼女か?それとも“彼女”か?」


愛する、

醜くてしょうがない誰かを、他の誰かをそんな感情で見たことはない。

そんなはずの心とは裏腹に何かを僕は感じ始めていた。

何かを求めている。



どちらに…?



僕が求めるNO NAMEは…?どちら?







   

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