16歳 | ナノ
05055/5
「本部へはこのことは保留にしておく、だが奥村燐の観察は続ける。と、いうわけで日本支部に私の居場所を確保してくれ。」
イスに座り込むシュラの表情は厳しかった。
それに不敵な笑いを浮かべるメフィスト。
「はい、私からも貴方のような優秀な祓魔師がいてくれると心強い。」
「ふん、話はそれだけだ。」
立ち上がったシュラだったが、
扉を開ける前に、振り返った。
「それと…あの倒れていた奥村NO NAMEのことだが、」
「…はい?」
「以前からこのような症状が出たのか」
「わかりませんねぇ、彼女悪魔に襲われたことがあるので、目の前での戦闘で気を失ったのではないかと思います。」
「……そうか、」
それだけ言って扉をパタンと締めたシュラ。
「お可哀想に、まったく信用されてませんね兄上」
上から顔をひょいと出して、そう言ってみれば、
兄上の顔が歪んだ。
「お前には言いたいことがたくさんあるぞ、アマイモン」
低い声で放たれた兄上の声。
「僕にも言いたいことはたくさんありますよ。」
宙づりになっていたのをやめて、
下に降りて、兄上と向かいあった。
ポケットに入っている、モノを机に置けば兄上の表情が変わった。
「…兄上、なぜ隠していたんですか」
僕の気持ちはなんだか荒れている。
なぜ、教えてくれなかったのだろう。
知っていたら分かっていたはずなんだ、
僕は彼女の真実を知っていたら、きっとこんな気持ちになならなかったんだ。
「バレてしまったら、しょうがない」
そう言って笑う兄上。
それに少し怒りが湧いて、
じっと兄上を見つめていると、
兄上の楽しそうな瞳が帰ってきた。
「本当に真実を知っていれば、彼女にこんな気持ちにならなかったのか?」
「…はい、」
きっと、そうだ。
彼女の真実を知っていれば。
すぐに、戻れなくなる前に僕は。
大きくなる前に僕は。
ちゃんと、想いを消せていたはずだ。
どうせ届かない想い、なのだから。
「そうか、」
「…兄上、いつから気づいていました?」
「彼女が彼女でなくなる前から」
「父上には」
それにふっと笑った兄上。
言う訳がない。
言える訳がない。
彼女の存在を知っていて、隠していたならば。
「…どうするつもりですか」
「あぁ、彼女の存在がバレれば私たちにとっても人間にとっても、大変なことになる。」
でも僕は。
彼女に戻ってもらわないと困る。
早くこの甘い感情を捨てたいのだから、
届かないことを証明してほしいのだから。
だって君が愛したのは、
あの青い炎だから。
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