16歳 | ナノ

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「尊い…存在…?」

前の前の悪魔、アマイモンの言った言葉がすんなりと頭に入ってきて、納得できるはずなどできなかった。

今感じている感情は、

恐怖と、疑問。

小さな嬉しいですら、楽しいなどと思える空気ではない。

「兄上が執着するわけも分かりました。」

一回、瞬きをしてもう一度私の瞳を見つめたアマイモンには、

前に感じた穏やかな気持ちが感じられなかった。

何も、理解できない。

しゃがみこんで、目線を私に合わせたアマイモン

結晶を持ち上げると、私の前の前で一回転させた。

「…それは、なに、尊いって、なに……っ」

「恐る必要などないですよ、貴方は元に戻らなければ。」

「元に戻る…?私は、私だよ…っ」

そう言い放った私に、アマイモンの表情は変わらなかった。

「貴方にこんな感情を抱くことになるなんて、僕は予想もしていなかったんですよ」

「…え、」

言っていることは今の話から関係のある言葉だろうか、

それともまた新しい話を始めたのだろうか、

ただ、呆然とアマイモンの口先からでる言葉に耳を澄ました。


「でも、しょうがない…だって貴方は愛される存在であるから、それしか存在の意味などないのだから。」

「な、に言って…るの…?」

「理解などしなくていいです、僕の言葉など…きっと貴方には届かないのだから」

この悪魔はきっといい悪魔なんだ、

そう思い始めていた夏休み。

縮まっているような気がした距離が。

もう姿など見えないくらいに、遠ざかっているように見えた。

少し切なさを感じたアマイモンの言葉、

溜めていた疑問をぶつけようとしたそのとき。

見知った声が響いた。


「テメー!!返しやがれ!!!」

「!」

こっちに走ってくる人の影、

燐だった。

「り、ん…」

「NO NAMEっ!!!今すぐそいつから離れろ!!!」

なぜ燐がアマイモンのことを知っているのか。

そう理解するのに時間はかからず、

アマイモンの持っている剣が目に入った瞬間に、

“燐は大事な剣を奪われた”と理解した。


「うーん、もう見つかっちゃったんですねー、つまらないなぁ…。」

相変わらずの無表情だが、

最後の“つまらない”の声だけが冷たく低く聞こえた。

呆然をアマイモンを見ていると、

燐を眺めていたアマイモンの視線がこちらへとむいた。

自然に背筋に冷たい感覚が流れると同時にアマイモンの声が発せられた。


「これを見れば、貴方は思い出すでしょうか?」

「何言ってんだお前、NO NAME、早くそいつから離れろ!」

燐の大きな声にびくついて、

慌てて立ち上がって、後ろへ下がろうとしたとき。

アマイモンの手にある剣が、目の前に差し出された。

そしてゆっくりと片手で鞘を握る。

金属がこすれ合う音と共に、その剣は鞘から解き放たれた。









 

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