16歳 | ナノ

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「兄上、あの人間の名前を聞いたんです」

兄上の部屋で昨日の出来事を語ってみる。

なんだか知りたくなったあの人間の名前、

一体何者なのか、

なぜ切り札なのか、

本を読んでいた兄上はチラッと僕のほうを見て、

笑った。

「人間に興味を持ったのか?」

楽しそうに言葉を向ける兄上を見ながら、

少し悩んでいる。

「あんな弱い人間がなぜ切り札なのか知りたくて」

「それで、名前を知りたいと?」

「…ハイ、」

おかしい、

名前なんて知らなくてもいいだろう、

なんな思いが駆け巡ったが、

よくわからなかったので、考えないことにした。


「でもあの人間、そう…NO NAME、ふつうじゃないですよね」

「あぁ、当たり前だ。」

「特別な存在とか、いうやつですか…?あの血を舐めれば力が増幅するとかいう…」

それに声を上げて笑い出した兄上をじっと見つめていると、

ふいに僕に顔が向けられた。


「…特別な存在、そんな言葉では表現などできない。力は本当だが、彼女には……お前にはまだ早い」

「…」

いつもこうやってすべてを話してはくれない。

これだから兄上は嫌いだ。

僕をからかって楽しんでいる、

「…じゃあ自分で確かめます。」

「どうやって?いためつけてでもして、白状させるのか?」

「それもいいかもしれません、」

それにまた不可解な笑みを浮かべた兄上。

僕は窓から外に飛び出すと、

香ってきた蜂蜜の香りをたどって

NO NAMEを探す。

案の定、

広場で本を読んでいたNO NAMEを見つけた。

悪魔の本を読んでいるみたいだ、

非力な人間。

そんなものを読んだって僕たちに対抗することなどできないのに、

一枚一枚真剣に読んでいる、

時々顔をゆがませながらも、逸らすことのない視線。

なんんでそんなに真剣なんだろう、と少し思った。

「こんにちわ、」

NO NAMEの前にスタっと飛び降りると、

一瞬身体をびくつかせて、

こちらを見た。

目が合って、そのまま動かなくなった。

でも、震えてない。


「アマイモン、」

「今日は貴方に聞きたいことがあるんです」

「…」

何者ですか?

そう聞こうとしたときによぎった、

この人間の泣く姿。

そうだ、前にそう聞いて、泣いていた。

「あの、」

「…悪魔をどう思っていますか」

予想外の質問に、

自分でもびっくりした。

なんでこんなことを聞く、

そんなこと、知りたくはない、はずなのに。

「…えと」

目の前で顔を下げてうつむく彼女を

ぼーっと眺めていた。

怖い、そんなことを言えば

殺されるだろうと思っているのか、

「私、よくわかんないんです、」

「…」

「悪魔って悪い悪魔だけじゃないですよね…?」

同時に僕を見た、

その言葉が耳に入って身体にしみこんでいく。


「さぁどうでしょう」

「貴方はきっと優しい人だと思います。」


優しい?

僕が??

目の前の人間を殴ったこの僕が?


「僕は優しくなんてないですよ、」


「……そうですか?なんだかそう思えません」


「…、」



そう言って目の前の悪魔の僕に


無防備な笑顔を向けたNO NAME、



暖かい何かが体に流れ出した気がした。


感じたことのない、感覚に。


なんだか戸惑っているような気がした。




 

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