16歳 | ナノ

0403
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学校は夏休みに入って、

塾のみんなは初任務に行ってしまった。

私は部屋に一人。

ため息しか出ない。

「はぁっ…」

雪男と燐には嘘をついてしまった、

覚えてないなんて、覚えてるのに。

だけど、自分が結界から出たからアマイモンと出会ってしまった。
自分の責任だ、

こんなこと知られたら、ますます自分の自由が利かなくなってしまう。

それに自分は弱い、自覚させられる。

燐と雪男がいない男子寮は静まり返っている、

なんだか、怖い。

そんな予感が的中するように響いた声、

思わず背筋が凍りついた。


「ここには貴方一人なんですか」

振り返ってみると、ベットにアマイモンの姿があった。

それに思わず声を上げて、後ずさると、

変わらぬ表情でアマイモンはまた口を開いた。

「大丈夫です、とって食ったりなんかしませんよ。」

「…貴方は、悪魔なんでしょ…」

「そうです、怖いですか?」

怖い、だって手が震えてる、

息が落ち着かない。

どうしてここにいるの。

アマイモンは何も言わない私を見て、

少し瞳を閉じて、口を小さく開いた。

「…そうですか、」

なんだか、発せられた声がすごく悲しく、切なく聞こえた、

でもきっと気のせいだ。

だって彼は悪魔なのだから。

「何しにきたんですか…」

「貴方に会いに、まだ名前を知らなかったから」

「名前…?」

名前など知って、どうするのか。
NO NAME
悪い考えが頭の中をめぐる。

そして急に立ち上がったアマイモンはこちらに近づいてきた。

それにびっくりして、

部屋から出ようと、背を向けると。

手をに強い力で握られた。


「っ…」

その痛さに声を発すると、

手の力は緩んで、離れた。

「すいません、つい力が入ってしまって」

「…」

ゆっくりとアマイモンを見ると、

澄んだ瞳に私がしっかりと映っていることに気付く。

なぜだか、

怖くない。

「…私の名前は、
NO NAME、」

小さく呟いていた。

勝手に開いた口が、不思議でたまらない。

「NO NAME」

もう一度私の名前を呼んだアマイモンの声が

なんだかひどく優しく聞こえた。


「ありがとうございます、それじゃあ」

「…!」

お礼を言って、一瞬で姿が見えなくなってしまった。

いつのまにか無くなっていた震え。

息を吐いて、落ち着くと。

どうして名前など知りたかったんだろう、と考える。


またアマイモンと出会ったことは雪男達には言えない。


また同じように静まり返った部屋で、

一人、考える。




彼はいったいどんな悪魔なんだろう、と



 

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