16歳 | ナノ

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「フェレス卿、NO NAMEは本当に倒れていたんですか」

「おや、疑っているのですか?」

「いえ、もし悪魔の影響なら…」

「…分かっていますよ、大丈夫です、ただの貧血でしょう」

目の前でいつものように笑うフェレス卿を見つめたまま、僕の視界は揺らがない。

あの部屋には何重にも結界を張っておいたのに、

NO NAMEはあそこから出たのか…?

当の本人は何も言わないし、

怪我はしていないようだったので、

安心はできたが…。

「心配性ですね」

からかっているつもりなのか、

声のトーンを少し上げて言い放ったフェレス卿に、少し怒りが湧いた。

視界を変えずに、瞳を細める。

「…貴方も、分かっているでしょう」

「はい、NO NAMEは特別な存在です」

そうだ、NO NAMEは特別な存在だ、

故に悪魔に狙われる。

だが、なぜNO NAMEがそのような存在になってしまったのか、

僕には分からない。

父さんは一体何を考えていたのだろうか、

きっとずっと“16歳”が解けずにいることを願っていたんだろう。

「フェレス卿、なぜ特別な存在が生まれたのですか」

その言葉にニヤっと笑うと、

フェレス卿は瞳を閉じた。

「わかりません」

「…」

「ですが、特別な存在が生まれたのではなく、元々特別だったのならどうでしょう?」

「なッ…そんな、ことは…今までの歴史では…」

特別な存在なんて今までの歴史では、存在しなかったはずだ。

ありえない。

「あくまで私の考えです」

「…そうですか、」

それに一息つくと、

僕もNO NAMEがいる扉を開いた。

そして視界に写った大切な少女、

いつものように笑顔を浮かべて、僕を見た。

それに笑いかけて髪を撫でると、また気持ちよさそうに微笑む。

「兄さんとは仲直りした?」

「うんっ」

「知ってたのかよ……」

「昔っからケンカしてはすぐ仲直りしてたから、分かるよ雰囲気で」

二人ともケンカしても、

後悔している、ごめんね、

そんな気持ちがダダ漏れなのだ。

こっちが呆れてしまうぐらいに二人の距離は近い、

近いほど、危ういものはないけれど…

「本当に怪我はない?」

「ん、大丈夫」

ごめんね、と小さく謝ったNO NAMEを優しく抱きしめれば小さな腕で抱き返してくれる。

暖かい、身体。

少しでも力を入れれば、すぐに朽ちてしまいそうな、やわい、か弱き身体。


「おい、そろそろ離せよ」

「なに兄さん、ヤキモチ?」

「う、うっせェ!!」

顔を真っ赤にしながら開放されたNO NAMEの髪をガシガシとなでる兄さんに呆れながらため息をつく。


NO NAMEは、優しく抱きしめられるのと

不器用ながらも頭を撫でるの、


どっちが好きなんだろう、



「そうだ、来週は塾生徒達は任務なんだよ」

初任務、グループに別れて行う。

やはり予想通りの反応を見せたNO NAME。

それに言いたくはないが、

思い切って口を開く。


「フェレス卿がNO NAMEはもう少し休んだほうがいいと言っていたから、NO NAMEは待機だ。」

「えっ…!」

大きな瞳にいっぱいの涙を溜めて、

すごく悲しそうにNO NAME頷いた。

「大丈夫、みんなが帰ってくるまで遅れている勉強をめいいっぱいすればいい」

「うん…」

「それとも俺たちがいなくて寂しーか?」

笑いながら兄さんの言葉から出た台詞が、

こんなにも僕の心を舞い上がらせることになるとは思わなかった。

NO NAMEから出た一言がこんなにも胸を締め付けて、

抑えきれなくなるまで、僕の心を苦しめるなんて。

まるでせき止められたダムが破裂する寸前のような気持ちだ、


ああ、やっぱり君には叶わない。


一人になんか、したくない。

















瞳に涙を溜めて、

綺麗な声で君が言うんだ。






寂しい、って。


まるで君の言葉には魔法が宿っているみたいだ。



 

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