16歳 | ナノ

0105
5/5

「NO NAME」

「!」

一人、壊れた礼拝堂で呆然としていると、

声が聞こえた。

あのピエロの人の声。

「…こんばんは」

私の挨拶に変な笑を浮かべる。

「私はメフィスト・フェレス」

「メフィストさん、どうして私を知ってるの…?あの時も、」

変な奴に追われていたあの時も。

「貴方は特別な存在、悪魔をご存知ですか?」

「悪魔…」

朝から見える変な生き物。

「貴方が見ている物は下級の悪魔、出会ったことがあるでしょう?」

脳内に過ぎった、

地面に叩きつけられる映像、

「あの時も悪魔が?」

「そうです、貴方を狙って」

「……私を、なぜ?」

「貴方の力が欲しいからです」

“力”

その単語だけメフィストさんの声音が変わったような気がした、

「私は力なんてもってないです」

「いいえ、貴方は持っているその身体に、悪魔が貴方の血を飲めば傷は治り、貴方の肉を喰らえば万能な身体になれる」

「そんな…」

信じられない、

「貴方は狙われてる、だからあの時、襲われたんですよ」

「でも今までそんなことは…」

無かった。

変なものを見たりもしなかった。

あの時と、今日からだけ、

「それは貴方に働いていた“16歳”という力が原因だったんですよ」

「“16歳?”」

メフィストさんは、私の隣に座ると、

口元を釣り上げた。

「藤本神父は貴方に特別な封をかけた。
それが“16歳”その者の力を封じる、ただし強力なものなので長くは続かない、16歳まで…」

「私は今日で16歳ですよ」

「昨日は前日、力が弱まった理由はその封をかけたものの精神が弱まった時」

父さん、

死んでしまったから…?

ねぇ、なんで隠してたの?

「なんで、私なの…?」

「呪われた運命は貴方だけじゃない、例えば…貴方の家族とか」

「燐?!」

雪男も私の家族であるけれど、

浮かんだ顔は燐、

だって、燐はあの時から少しおかしい、

「奥村くんは悪魔の息子。」

「じ、じゃあ悪魔ってこと?」

燐は、悪魔の息子だった。

でも雪男は人間、

悪魔の力を受け継いだのは燐だけ、って…。

じゃあ父さんと燐たちは本当の家族では…

「貴方は本当の家族ではない」


「…」

知ってた。

だってどう考えたって、

燐達と同じ歳なのはおかしいし、

でも改めて言われると、

何かが悲しくなる。


「貴方には正十字学園に入学してもらいますよ」

私は燐と一緒に就職するはずだった、

今頃学校なんて、行きたくない。

「私は貴方が喰われるなんて考えたくもない」

そうだった、

私は悪魔に狙われる。

「きっと貴方のお兄さんが守ってくれる」


雪男は7歳から祓魔師に。

燐は悪魔。




それでも、

私の大切な家族。










偽りではあったけど。








そして妖しく笑うメフィストさん


「ハッピーバースデー、NO NAME」










   

[しおりを挟む]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -