16歳 | ナノ
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「NO NAME」
「!」
一人、壊れた礼拝堂で呆然としていると、
声が聞こえた。
あのピエロの人の声。
「…こんばんは」
私の挨拶に変な笑を浮かべる。
「私はメフィスト・フェレス」
「メフィストさん、どうして私を知ってるの…?あの時も、」
変な奴に追われていたあの時も。
「貴方は特別な存在、悪魔をご存知ですか?」
「悪魔…」
朝から見える変な生き物。
「貴方が見ている物は下級の悪魔、出会ったことがあるでしょう?」
脳内に過ぎった、
地面に叩きつけられる映像、
「あの時も悪魔が?」
「そうです、貴方を狙って」
「……私を、なぜ?」
「貴方の力が欲しいからです」
“力”
その単語だけメフィストさんの声音が変わったような気がした、
「私は力なんてもってないです」
「いいえ、貴方は持っているその身体に、悪魔が貴方の血を飲めば傷は治り、貴方の肉を喰らえば万能な身体になれる」
「そんな…」
信じられない、
「貴方は狙われてる、だからあの時、襲われたんですよ」
「でも今までそんなことは…」
無かった。
変なものを見たりもしなかった。
あの時と、今日からだけ、
「それは貴方に働いていた“16歳”という力が原因だったんですよ」
「“16歳?”」
メフィストさんは、私の隣に座ると、
口元を釣り上げた。
「藤本神父は貴方に特別な封をかけた。
それが“16歳”その者の力を封じる、ただし強力なものなので長くは続かない、16歳まで…」
「私は今日で16歳ですよ」
「昨日は前日、力が弱まった理由はその封をかけたものの精神が弱まった時」
父さん、
死んでしまったから…?
ねぇ、なんで隠してたの?
「なんで、私なの…?」
「呪われた運命は貴方だけじゃない、例えば…貴方の家族とか」
「燐?!」
雪男も私の家族であるけれど、
浮かんだ顔は燐、
だって、燐はあの時から少しおかしい、
「奥村くんは悪魔の息子。」
「じ、じゃあ悪魔ってこと?」
燐は、悪魔の息子だった。
でも雪男は人間、
悪魔の力を受け継いだのは燐だけ、って…。
じゃあ父さんと燐たちは本当の家族では…
「貴方は本当の家族ではない」
「…」
知ってた。
だってどう考えたって、
燐達と同じ歳なのはおかしいし、
でも改めて言われると、
何かが悲しくなる。
「貴方には正十字学園に入学してもらいますよ」
私は燐と一緒に就職するはずだった、
今頃学校なんて、行きたくない。
「私は貴方が喰われるなんて考えたくもない」
そうだった、
私は悪魔に狙われる。
「きっと貴方のお兄さんが守ってくれる」
雪男は7歳から祓魔師に。
燐は悪魔。
それでも、
私の大切な家族。
偽りではあったけど。
そして妖しく笑うメフィストさん
「ハッピーバースデー、NO NAME」
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