笑みをこぼす | ナノ
02022/4
「お、おはようございますっ」
朝早くかまどの前に立っていた利吉さんのお母さんの姿を見つければ、
挨拶をした。
「あら、おはよう」
今日も爽やかで綺麗な挨拶をしてくれたお母さんに微笑みを返すと、
はっと浮かんだことを口にしなければならないと思い伝えようとしたところ、
お母さんの口が先に開いて慌てて喉元まででかかった言葉を抑えた。
「聞いてるわよ大丈夫!それにしてもすごいわねぇ未来の人なんて…」
「そ、そうですか!…これからお世話になります」
その言葉にお母さんは満面の笑みを浮かべた。
「夫は仕事で中々帰ってこないし、利吉も仕事人間なのよ!だから…嬉しいわ」
今日からこの御宅でお世話になることになった。
昨日利吉さんに行くところがないだろうから、ここにいたらいい。
とありがたい言葉をもらたので、甘えることにした。
正直不安なことはたくさんあるけれど、今はここで生きていかなければならない。
「ありがとうございます、私、手伝えることはなんでもしますので!!」
「ありがたいわぁ、」
「それと…この時代に慣れたら、なるべくはやく仕事を見つけて出ていきますので!」
「いいじゃない、ずっとここにいれば!」
さすがにそれは…といえば、また微笑ましい笑みを向けられて、
すごく幸せな気持ちになれた。
この家の人は優しいなぁ……。
「じゃあ朝食の準備手伝います!」
「ありがとう」
っと言ってもこの時代の料理などは大体わかるが、調理器具や、
かまどの使い方などまったく分からない。
何も手を付けずに居られたら、お母さんがゆっくりと教えてくれた。
それに感謝しながら朝食を手伝う。
あれ、案外現代と変わらない朝食、かな…
魚とご飯と味噌汁。
良かった、食事は食べられる。
食事の準備ができると、妙に食事の量が少ないことに気づく。
これって、二人分…?
「利吉は夜中に仕事に行っちゃったのよ」
疑問に思ってることが簡単に解決すると、夜中に仕事って、なんの仕事をしてるんだろう。
とまた疑問が増えた。
「さぁ食べましょう」
「あ、はい」
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