笑みをこぼす | ナノ

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絶望感と恐怖、

それだけが全身を支配され、震える足が止まらなくなっていた。

考えるのは悪いことばかりで、必死に自分に嘘をつきたいぐらい。

「捕って食ったりなんかしないよ」

そう言って目の前の男の瞳は細まったが、こんな変なコスプレ集団のことなんか信用できるか。

だから、安心してよ。そう言いながら手を伸ばしてきた包帯の男に一瞬足を一歩後ろに下げたが、

遅かった。もう手は自分に届いていて、柔らかい感覚だけが感じられる。

自分の頭に置かれたのは包帯の男の大きな手で、ゆっくりと撫でられる感覚に

心地よさを覚えている。

え、なんで…安心してんの?!

不信な瞳で男を見上げた瞬間、ふいに身体が変な感覚に包まれた。

「え…ッ…」

脳が正しく作動するより早く視界が次々のものを移していく。

背中と太ももにまわる手の感覚にふと思う。

…抱きかかえられている?!

青ざめていく自分の顔がはっきり分かるぐらい唖然していると思う。

なに、なんで木の上を飛んだりありえないスピードで走ったり!?

未だに自分の状況を把握しきれてない私はその光景を見ているだけだった。

そこで思う、もしかしてあの変なコスプレ軍団に誘拐されてる?!

だから木の上とか…。

その瞬間自分を浮遊間が襲った、

「っあ……っ、」

木の上から飛び降りた?!ありえない!!死ぬよ!!!

なんともいえない感覚に体の底から沸き上がる気持ち悪いものを必死に抑える。

ジェットコースター嫌いなのに乗った気分だ…。

放心状態になりかけた自分の耳に入ってきたのは低く通った声だった。

「ごめん、大丈夫?」

地面に意外とすんなり着地するとその聞こえた声について一気に思考が回転した。

なんだか優しい声におそるおそる上を見上げれば、自分を抱きかかえている者の顔が見えた。

それはさっきのコスプレ集団にはいなかった者の顔だった。

茶色髪の結った長い髪に瞳を見開いた、そのまま見つめているとふいにその青年の

視線が下に向いた。ガッチリと目が合った瞬間青年の瞳が見開かれた。




「(な、なにこのイケメン…?!)」




 

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