笑みをこぼす | ナノ
06033/3
「はーーーぁーーー…」
「そんなため息をついてどうした、この滝夜叉丸が解決してやろうか?」
「遠慮しときます」
今は心が広い私でも滝夜叉丸とは話す気にはなれない。
それにタカ丸は苦笑いしていると食堂に入った。
「う…っ」
案の定みんなの目線がこちらに向くと、途端に恥ずかしい気持ちになってくる。
そそくさ一番奥の席に座ると、タカ丸が食事を運んできてくれた。
「いやぁー注目の的だね」
「……嬉しくないよ」
「まぁ噂だからいずれみんな忘れちゃうよ」
「そうだと、いいです…」
今食堂に五年生がいないのを心底安心した。
なんだか顔合わせづらい久々知先輩、会ったら謝らないと…。
すると隣に誰か座ってきたので視線をあげたら、薄い緑色の忍服が見えた。
「おはよう」
朝から爽やかな笑顔を向けられるのかと思ったが、
今日はなんだかいつもと違う感じな伊作先輩に挨拶すれば笑顔を返される。
「なんだか憂鬱そうだね」
「はい…そりゃもう………」
「嘘の噂を流されて憂鬱なんだよー」
それに瞳を瞬きした伊作先輩にそうなんですよ、と頷く。
「嘘…だったの?」
やはり知っていたか、誤解です。と返せば、
なんだか緩いいつもの伊作先輩の笑顔が返ってきた。
「そうなんだ!そうか、だから憂鬱そうなんだね」
「はい…」
爽やか全快癒される笑顔を見れたのはいいですけど今日はなんだか憂鬱です。
「僕からもそれは誤解だって言っておくよ、みんなに」
「本当ですか?!」
それにニッコリと頷いてくれた伊作先輩にありがとうございます。とお礼を言う。
後はこの噂が消えればいいけど、
それで久々知先輩に謝らなくては……。
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