笑みをこぼす | ナノ

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薄暗かった視界が光に包まれていく、身体に感じる暖かい日差しを浴びながら目を開ければ

朝の日差しが私を照らしていた。

それに気持ちよさとちょうどいい時間帯だな、と思いながら背伸びしようとした所気づく。

小さな唸り声が聞こえたと思ったらすぐ横に久々知先輩の姿があった。

「ちかっ…!」

なんで今ままで気付かなかったんだろう、と思いながらゆっくりと体を起こした。

瞳を閉じている先輩に一緒に寝てたのだと考える。

じっと顔を見れば長いまつげがすっと伸びていて深く閉じられた瞳に白い肌。

この人本当に男の子だろうか。そんな事を一瞬考えたが、

たくましい体つきは自分と全然違うし、やっぱり男の子だ。

「でも…綺麗、だなぁ……」

整った顔が瞳を閉じて寝息をたてている、なんだか安らぐ。

「……そんなに見られると照れるんだが」

ふいに放たれた声と動いた唇にはっとなり、久々知先輩の顔だけを映していた視界を広げた。

「……起きてたんですか」

恐る恐る開いた言葉。

久々知先輩の瞳はすでに開いていた。寝っ転がった体制は変わらないまま、

自分の腕を枕にしていた腕も変わらないまま、先輩の唇が動く。

「……つい、さっき」

さっきっていつ…?!人の顔をじろじろ見ていたことがバレてれば相当はずかしいが

先輩はさっき恥ずかしい、と口にしなかった?!

揺らぐ瞳を先輩に向ければ、なんだか恥ずかしそうに視線をそらされる。

「す、すいません…」

それを聞いた先輩はむくりと起き上がって、私を見下ろした。

大きな瞳と目が合うと、それはゆっくりと細まった。

その優しい笑顔に不覚だったが胸が揺いだ。

「男に綺麗ってのはさすがに嬉しくないけどな」

「や、でも本当に綺麗でしたから!カッコイイってことですよ!!!」

「もう、いいわけにしか聞こえないぞ」

「ほ、本当ですって!!!」

怒ってるのか、面白がってるのか分からない笑みを向けられてなんだか変な気分。

本当にカッコイイと思ったと言おうと思ったが、それもなんだか恥ずかしい。

「あれ、朝から二人ともなにやってるの?」

その声に振り返れば、後ろには不破先輩の姿があった。

お決まりのように後からやってきた鉢屋先輩もこちらに視線を向けた。

「お、おはようございます」

「おはよう」

にっこりと笑って挨拶してくれた不破先輩は後から疑問そうな表情をする。

それに気づいたかのか久々知先輩は口を開いた。

「ちょっと話してたんだ」

ちょっと話していただけじゃないが、秘密にしたい理由があるのか。

それとも綺麗と言われたことをすごく気にしているのか。

不安になりつつ心を隠しながらとりあえず頷いておくと、鉢屋先輩の鋭い目線がこちらに向く。

「な、なんでしょうか…」

「別に」

朝だから機嫌が悪いのか低血圧なのかなんだかいつもより更に厳しい表情に心臓が凍りついたような気がする。

こ、恐い…。

「あ、そろそろ教室に行かないと」

「そうですね」

もう授業の時間に近づいていたので、五年生と別れて自分の教室に向かっていると

後ろから声をかけられた。

その声の主は自分の友人であってなんだか和める人、タカ丸だ。

「おはよう」

「おはようNO NAMEちゃん」

なんだか妙にふぬけている顔に歪んだ顔をすると、逆に笑みで返されてしまう。

「なに?」

「いやぁー知らなかったよーNO NAMEちゃん兵助君のこと好きだったんだね」

「……は?」

返ってきた言葉が予想する言葉よりはるかに的から外れていたので思わず自分もまぬけな声を出してしまう。

それにまたニヤニヤとした表情が返されるが全然理解ができない。

「なんのこと?」

「もう噂でもちきりだよ〜だって朝早くから二人っきりで縁側で話してたって」

それにもう声もでなくなった自分、回らない頭を必死に回転させる。

それは自分と久々知先輩が朝早くから話していたのを見られていて、

何か勘違いされていると…。

そこまでは良かった、それはそれを見た人に誤解だと理解させればいいのだから。

でも、タカ丸の“噂”という言葉が気になって気になってやっとのこさ考えを導き出す。

「噂って…どこから?」

「ん?所々から〜結構みんな話してたけどな〜」

「?!」

なんで忍者ってのはこうも情報が早いんだ、どうして…。

これは久々知先輩に大変申し訳ない、どうやって誤解を解くべきか、

必死に考えるがなんだかもう頭は回らない。

「なになに?どうしたの?」

「タカ丸、誤解…普通に二人とも朝早く起きちゃって普通に話してただけ!」



 

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