笑みをこぼす | ナノ
05033/3
みんなで縁側で息を休めていると、
不意に鉢屋先輩が自分の後ろの方を見つめていることに気づく。
「なんですか?」
「これ、誰かに貰ったのか?」
指さされたのは自分が身に付けていた髪紐で、
この時代の髪紐も持ってなかったのでずっと付けていたことに気づく。
「はい、利吉さんに」
「利吉さん?!」
あ、これ言っちゃまずかったかな。
なんだか驚いているみんなを代表して久々知先輩の口が開いた。
「NO NAMEって利吉さんのこと知ってたっけ?」
転入してきたばかりの私が利吉さんの事を知っているのはおかしいことだったか…
利吉さんはここで働いている山田先生によく会いにくるから生徒とは顔見知りだと
聞いていたのに、まずったなぁ
「前に、会ったことがあって知り合いというか」
「ふーん」
それになんだか興味なさげに放たれた鉢屋先輩の声に苦笑いしていると、
不破先輩が髪紐に触れた。
「綺麗な色じゃないか」
「はい、気に入ってます」
「この色好きなの?」
それは淡い桜色に髪紐で久々知先輩が問うことに頷けば、
なんだか考えるように顔を歪めた。
「でも似合ってるよねその髪紐」
ニコニコしながら不破先輩が言ってくれたので、
ありがとうございます、と微笑みながらお礼を言えば。
可愛い、可愛いと尾浜先輩に撫でられた。
本当に私年上だよね……背が小さいからかな。
まったく大人の雰囲気とか放たれてないとか……。
五年の行為にちょっと自分に対する自信を失ったりして。
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