RIHAN | ナノ

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「コラ鯉伴、夜遊びもほどほどにしとけぇ」

「へいへい、今日限りだから許してくれよ」

なんて口から出た嘘だったが親父も人のこと言えないからそんなに厳しくできねぇし。

カラス天狗の目を盗み見て、家を抜けると、いつもの店に向かう。

「くぁー……うめぇな、やっぱ」

いつもの酒を飲むと、安らいだ気分になれる。

瞳を閉じていると、隣から男たちの騒ぐ声が聞こえてきた。

「お前、飲みすぎじゃねーの」

「うるせぇーな、いいじゃねぇかこれぐらい!!!!」

「しょうがねぇな、それより聞いたぞお前、嫁に働かせてるんだってな」

「あぁ、あいつがもう俺とは縁を切りてぇ、とか言うからな…」

「それで金くれれば…とか言ったのかよ」

「あぁ」

それに汚い笑い声を上げた男は酒をまた口へと運んだ。

…情けねぇ、女に働かせるなんてな。

「まぁあんないい嫁手放せねぇよな、」

「今度お前んとこにも行かせてやろーか?金くれるんだったら」

自分の女までも売るのか、ひでぇな

「いや…お前んとこの娘なら欲しいけど」

「あぁん?ダメだダメ、あいつもやっと女らしい身体になったばかりだからなぁ、
俺が最初に食っとかねぇーと」

「金、払うからさ…お前んとこの娘かなり上玉じゃねぇーか」

「まぁ考えといてやる」

嫌な話し聞いちまったな……、

酒も不味くならぁ。

席を立つと、ゆっくりと店の出口まであるく。

今日も月は相変わらず綺麗だった、昨日と同じ時間帯で少ない人気の道を歩く。

ふと前をみた時、昨日と同じ人の姿がそこにはあった。

だが昨日とは違い、門の前に蹲って頭を埋めていた。

「おい、何してんだぁ、こんな夜更けに」

体の細い体からガキかな、と思ってすの姿を見下ろしていたら。

ふいにゆっくりと顔が上がった。

「…あん?」

「………はい?」

一瞬、自分の動きが停止したかのように、身動きができなかった。

長いまつげに大きな瞳、白く透き通った肌に薄い唇、全てが整ったその顔からは

男だなんて想像もできなかった。

「お前…男のくせに女みたいな顔してるんだな」

これが女だだったらかなりの好みかもしれねぇ、と内心思いつつ、

男の言葉を待っていると、驚くべき一言が帰ってきた。

「私……女ですよ」

それと同時に立ち上がった、

「あぁ?!」

その言葉に身体がぐらついた、男だと思っていものがやっぱり女だった。

安心しきっていた胸は急に鼓動を早く打ち始める。

でもその中で煮え切らないものが一つあった。

「……女なのに、髪短けぇ」

「あ、…はい」

それに少し瞳を細めた女に眉を寄せる。

「なんでだ?」

「……、」

「誰かに、切られた……」

可能性をつぶやいてみると、案の定目の前の女はそれに今にも泣きそうな顔をした。

ぎゅっと唇を噛んで、必死に涙をこらえるその姿にまたも胸が熱くなり出す。

それにたまらなくなって女の背中に手を回すと、

そのまま引き寄せた。

「え、ちょっ…!」

押し返そうとする力を無視してそのまま強く抱きしめた。

「髪なんてどうとでもねぇよ、お前美人だし」

「……さっき男と間違えましたよね」

「…まぁ、いいじゃねぇか」

力を抜いて、目の前で笑ってやると、ふいに女も頬を緩めた。

「…それで、誰に切られたんだよ」

「そ、れは……、」

女の言葉が終わらないうちに高い声が響いた。

「NO NAME」

「母さん!おかえり!!」

振り返るとそこには前の前の女によく似た女の姿、

なるほど、美人な母親だな。

「またこんな時間まで……あれ?鯉伴様じゃないですか?!」

「ん?俺のこと知ってるのか」

「はい!組みの者です…!」

ってことは、妖か…

全然わからなかった、人間みたいな妖だな…。

「すいません、娘が何かしましたでしょうか」

「あ、いや。夜更けに門の前に立ってるから俺が声かけただけだ」

「そうですか、すいません…」

それに笑って返すと、親子は頭を下げて家の中へと入っていった。

母親の腕にひかれて門へと入っていった娘の姿をずっと見つめたいた。

「いっけね…また叱られらぁ」

自分もまた家へと足を急ぐのであった。





 


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