息を止めるの | ナノ

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「ぐ…っ…」

鈍い痛みが腹部から伝わる、電流が体中に流れているかのような感覚

腹部を抑えながら、NO NAMEはゆっくりと歩く、ポタポタと赤い血がこぼれ落ちて地面を濡らしていく。

暗い道をただゆっくりと歩くNO NAMEの赤く輝く髪を大きな月が照らしていた。

「……はぁっ、」

息を吐き出しては、また吸い込む、深呼吸を繰り返しながら意識がもっていかれないように自身を保つ。

聞こえてくる、追っての足跡。

NO NAMEは息を吐き出すと、丸まっていた背中をまっすぐにさせて、腰の剣に手をかけた。

「私を殺せると思ったか」

静かな声は、追いついた追って達の耳で反響する。

複数の男たちはにっこりと笑みを浮かべると、剣を差し出した。

「その怪我でよく言えるな、アルタカの民よ」

NO NAMEは剣を一瞬下ろすと同時に足に力を入れて地面を蹴った。

その瞬間、追っ手達の身体が次々と倒れていく。

一瞬の出来事だった。NO NAMEは目に追えない速さで追っ手達を倒してしまった。

だが、再びNO NAMEは背中を丸くさせると、腹部から漏れる血が音を立ててこぼれ落ちる

「不覚だなあ、本当に」

静かに囁くと、NO NAMEは瞳を閉じかけた。

だが、前から歩いてくる人の気配に再び剣に手をかける。

「……誰だ」

男の声だった、月明かりに照らされたその男の姿は見覚えのあるもの

栗色の髪、よく覚えている。

「イアルさん」

イアルは目を見開くと、時が止まったかのようにその場にたちすくんだ

「…NO NAMEか」

「はい、お久しぶりですね」

笑みを作ってみせたが、イアルの顔は歪んだ、そしてゆっくりと近づいてくると

NO NAMEが腹部を抑えていることに気づく、


「どうした?!」

「いや、大丈夫です…浅いですから」

「浅くても血を止めなくては死んでしまうぞ?!」

NO NAMEは軽々しくイアルに抱きかかえられると、そのままイアルは地面を駆け出した。

「あ、大丈夫ですって…!」

「いいから黙っていてくれ、まだあの男たちのことは聞かないから」

“男たち”

それはつまり、NO NAMEに剣を向けてきた追って達のこと

確かに説明するには気力が足りないと、NO NAMEは瞳を閉じた。





   

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