息を止めるの | ナノ

0021
1/1



「…トウヤはNO NAMEの居場所は知らないの?」

カザルムの王獣舎の中、エリンは扉にもたれているトウヤに向かって話しかける。

ゆっくりと視線を上げたトウヤは小さく笑って顔を傾けた。

「知らないな」

「旅に出る…、真王陛下の使者から逃れたいのはわかるわ…でも、一人でなんて」

「あいつが決めたことだ」

トウヤは王獣舎から外を眺める、広がる景色に瞳を細めて今は近くにいない妹を想う。

「それに俺たちはもう自由なんだ」

その言葉にエリンは顔を歪めた。そしてトウヤに近づくと、小さく口を開く。

「じゃあ、貴方はなぜNO NAMEと行かなかったの?」

トウヤとNO NAMEにくだされた命令。

NO NAMEのようなトウヤには逃げることだってできたはずだった。

エリンの思いは、トウヤがエリンの護衛についた頃から変わらず揺らいでいた。

「あの子と、一緒に行けばよかったのに…貴方だって自由なんでしょう」

トウヤは瞳を瞬きさせると、小さく息を吐く。

その動作にエリンは頭を傾けた、静かな王獣舎の中、三頭の王獣も眠り、寝息が聞こえる中、エリンの瞳をトウヤは見た。

交差した視界の中、トウヤの瞳が細まって、その表情は和らいでいた。

「俺はあんたを見守っていたいと思ったから」

時がとまったような感覚だった、エリンの中の想いが破裂するかのように、

身体中が熱くなる。

「…妹の言った通りだ、王獣と共に生きるあんたを、守れればそれでいい」

「…っ…トウヤ」

エリンは腕を組むトウヤの手を掴んで、自分と重ねれば、火照っているであろう自分の頬に寄せた。

それに反発せずトウヤは瞳を閉じて、暖かい感覚を感じる。

「私は…」

「言うなよ、」

エリンが言葉を続けようとしたのをトウヤは止める、

掴まれていた手を離せば、トウヤは自分の顔を手で被って、息を大きく吐き出した。

「どうしてだ、」

「…、」


トウヤの放つ言葉は戸惑いと切なさと、火照った想いが混ざっているような言葉だった

エリンはそらすことなく、そんなトウヤを見つめる。

「見守ると決めているのに…どうして」

「…トウヤ、」

エリンに伸ばされた腕はエリンの頬に触れると、ゆっくりとエリンの背中に回ってエリンを抱きしめた。

エリンの耳に触れるトウヤの熱い息はエリンの体も熱くさせる。



「どうしてこんなにあんたが欲しいんだろう」













     

[しおりを挟む]
  back  home


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -