息を止めるの | ナノ
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「NO NAME、トウヤ!!!」
空高く飛びさったリラン、とそれに乗り込んだNO NAMEとトウヤ、
二人の赤い髪が揺れている。
それを見つめながらエリンは必死に叫んだ。
「…、」
イアルもまた飛び立つリランを見つめていた、
それを見たイアルに拘束されているダミアは小さく笑うと、低い声を放った。
「ふ、…哀れな兄妹だ」
「……どうゆうことだ、」
「私はお前に命令を出しただろう、アルタカの民を捕まえろ、と…」
「…、」
ダミアは以前イアルに命令を出していた、だがアルタカの民の村は襲撃され、
生き残ったものは発見できなかった。
人の燃えた後、黒く染まった村人。
直視できないほどの、現実だった。
「…それは貴方が仕掛けたことではないのか」
自分が仕掛けたことではないかのようにアルタカの民を探させた、自分が罪に問われぬように。
ダミアの唇が弧を描くと、薄い金色の髪が揺れる。
「……そうだ、全ては私が仕組んだ、私の兵を送らせ、民を絶滅させたのだ…。だが、政治には最も使える人材を残しておきたかったからな、村で一番強い者を連れてきたのだ、そしてお前たちに生き残りを探させ殺すつもりだった…、」
怪しい笑みがダミアに浮かぶ、一体どうしてそんなことをしたのか、とイアルが聞く前にダミアの口が開く。
「…アルタカの民とは、呪われた一族なのだよ…この世界は神、真王が収めるべき世界、最初のアルタカの民を知っているか?もうほとんど誰も知らないもう一つの神話だ。」
イアルの表情が歪んだ、剣を掴む手の力を強めると、ゆっくりと息を吸い込む。
「人の形をした精霊獣と言われていたが、神に近い存在が一人の人間と結ばれたのだ、
生まれたのは赤い髪と真紅の瞳を持つ、人間だった。その者は頭蛇を切り裂き、王獣と同じ力をもち、無限の可能性を持っていた。
まるで戦うことだけに生まれてきたような獣の子。同じ一族は増えていき、
いつかアルタカの民といわれるようになった。
誇り高き、アルタカの民は緑の民に忠誠を誓ったのだ、なぜだかわかるか?
アルタカの民は罪を背負って生きているからだ、誰かに忠誠を近い縛られなければいけない。
それは神と人間が結ばれた罪、民は全てを背負わなければいけないんだよ。
そして赤き民はその罪と共に呪いを引き寄せると言われていた。世界を赤に染める呪いだ、」
「…呪い、だと?」
「ああ、あの兄妹も呪われて生きているのだよ、可哀想に、縛られなければいけない運命にある、私はそれを助けてあげたかった」
イアルの眉が少し、動くと、剣を掴む手が震え出した。
「あの子を縛っていたのはお前だろう?!兄妹を離し、家族を殺し、絶望させたのはお前だ!!!」
「それだけの罪を犯しているのだよ、あの民の祖先は…力を持つ民はいつしか真王の地位さえ取りかねん」
その言葉がイアルの耳に入った瞬間、イアルの胸の中にあった何かが切れたような気がした。
怒りの水が流れ出して、イアルの瞳を細める。
――あの子は呪いを背負って生きてきたのか、
―――それでもあの子は、縛られていてもあの子は、探していた。
――光を、探していた――…
「あの子は、必死に生きているんだ!!戦いながら、自分を縛りながら、生きている!!!」
イアルの剣がダミアの腹部を貫くと、小さな叫び声が聞こえた。
脱力したように倒れ込むダミアの身体に、もう命の灯火ななかった。
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