息を止めるの | ナノ

我人生の柱
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気づけば暗い世界が広がっていた。

狭くも広くもない、世界でただ一人佇んでいる私の姿。

なぜ、一人なのか、胸が痛む、苦しい。


“闇を恐ることなかれ”


常に教えられていた言葉、闇を恐れるな、気高く戦え、最後まで凛々しく生きろ。



「無理だよ…、恐い…」


私を覆う闇は消えない、刃を取り出して追い払うことできない。

恐怖に負けて震える全身を抑えられない。


「気高くあれ」

母さんの声だった、必死に名前を呼んでも答える声は聞こえない。

ただ昔から教えられた言葉を放たれるだけだった。


「気高くなんて…いられないよ…私は、弱いっ……」

胸に無数の刃が刺さったように痛めつけられた心は簡単には治らない。

ふと顔を上げれば、一本の光が見えた。


その光に照らされている佇む大きな影。


「王獣…っ」


凛々しい王獣の姿は前と変わらなかった。

覚えている、初めて王獣と刃を交えたあの時、怖くて震える体の中に、

高鳴る胸の鼓動も感じたあの時。


こちらを睨む目線が痛くはなかった。

ただ震えはもう止まっていた。



「!」


瞳を開けるとそこは知らない天井だった。

勢い良く起き上がると、所々が傷んだ、それに顔を歪ませると、

緑色の瞳と目があった。

「っ…」

小さく声を漏らした緑色の瞳を持った彼女に瞳が見開かれた。

「霧の民…っ…?!」

私の声に驚いたのかしばらく唖然としている彼女にベットから出ると跪いた。

その行動に瞳を丸くした彼女は慌てて私を肩をつかむ。

「まだ体は治ってないでしょう?!どうしたの?!」

「いえ、傷の治りは早いので…」

顔を下げたまま放った言葉と同時にゆっくりと顔を上げた。

緑色の瞳を見つめながら、



「霧の民のお人よ、忠誠を捧げます」


「忠清…?」



霧の民は我忠誠のお人。


生涯守りし一族の民。




我人生の柱となりしお人。








     

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