息を止めるの | ナノ

真紅に染まる民
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「大丈夫でしょうか…?」

「そうね…今はとりあえず大丈夫、と言っていいかしらね…」

「そうですか…」

胸がホッとするのが分かった、目の前のベットで横たわりさっきよりも顔色がよくなった少女を見つめていると、エサル先生の視線を感じた。

「……あの、すいません勝手に連れてきてしまって…」

「いいえ、人が傷ついているのをほっておくのはおかしいわ。貴方の行動には評価します」

その言葉に頬を緩めたが、エサル先生の表情は険しかった。

「どうしました?」

「エリン、まさかだとは思うけど、この子はアルタカの民じゃないわよね」

“アルタカの民”

その見知らぬ言葉に頭を傾けるとエサル先生が目を見開いた。

「まさか貴方知らなかったの?!貴方は霧の民の血縁でもあるのにっ」

「霧の民に関わっているのですか?!」

霧の民なら当然しっている事だと言わんばかりの表情にさすがに焦りを感じる。

「いいエリン、しっかりと覚えておくのよ」

「はい…」

「アルタカの民は戦闘民族と言われていて、その力は闘蛇も王獣にも勝ると言われているわ」

「闘蛇や王獣にも?!」

つい大声で発せられた言葉を慌てて手で押し込むと、

自分を落ち着かせながらエサル先生を見る。

小さく頷いたエサル先生は変わらぬ表情で話を続けた。

「ええ…その民はどの国にも従わず、ある民だけに忠実だった。その民が霧の民よ」

「…、」

聞いたことのない話に驚きを隠せない。

そんな民が存在していたなんて、

「アルタカの民は霧の民を守り、滅多に人の目にはでない民だと言われているわ…
遥か昔の話だけど…今は見たものはいない、絶滅したと言われているのよ」

「…でも、この子がその民だという証拠は…?」

「見ればわかるでしょう、」

エサル先生と視線が少女に向いた。

少女を助けることに必死になっていた私は少女の容姿はあまり見ていなかったが、

改めて少女に目をやると、息を飲んだ。

「綺麗……、」

少女の髪は真紅に染まっていた、息を呑むほどの美しい色に

なぜ今まで気付かなかったのだろうと思った。

「アルタカの民はこの髪の色が特徴的…そして瞳の色も真紅なの」

「じゃあこの子が目覚めれば…」

「ええ、そうね」

瞳を開けて、真紅に染まっていればこの子はアルタカの民ということになる。

でもなぜこんな傷を負っているのか、想像もできない。


また、リランの慣れない人を嫌う行動がいつもより険しく鋭かったのを今も覚えている

王獣には何かあるのだろうか…。


     

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