息を止めるの | ナノ
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「あいつは一体何者なのだ?!王獣が引いていたぞ?!」
「い、いえ…あの子は警備員でして…陛下のお命をお守りするよう言っていますので…」
警備員…?
王獣と陛下の間に入ったときには思わず目を見開いた。
音無し笛を吹くよりも早かったあの足と王獣を前に動じようともしなかった。
随分と肝のすわったやつだ…。
それは先ほど合った怪しげな者と同じ人物だった。
カザルムの警備員だったのか、だがここの教導師長と顔を合わせるとそそくさここから遠ざかっていった。
そしてエリンが出てくると陛下に手を差し伸べていた。
「おい、イアル」
「…ああ」
カイルの瞳はあの者が歩いていた方向へとむいていた、
「お前が言っていた被り物の奴だよな、あいつは」
「そうだ」
「へえ、警備員ねぇ」
カイルも気づいたらしい、瞳を細めてすこし口元を釣り上げていた。
まったく、こいつは…。
興味深い奴に会ったらすぐに好奇心溢れる行動をする。
でも確かにあいつに感じた気配は殺気に似たものだった。
でも何かが違う。
でも似ていた、あのアルタカの民のトウヤが放つものに、似ているような気がした。
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