息を止めるの | ナノ

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薄暗い部屋の中で一人、窓から漏れる光を眺めていた。

何か考えるわけでもなく、ただ呆然と光を眺めていると、ふと脳内に赤い民達がよみがえる

窓から漏れる光がひどく残酷に見える、

なぜ、なぜ。そんな疑問が頭に残って、離れない。

もう忘れてしまったほうが楽な現実を、俺は消せないでいる。

消せるわけなんかない、あれは悲劇だ、まるで地獄に落とされたかのような

そんな感覚に顔を歪めると、ふと腰にある剣に触れた。

「……、」

偽りであるその剣を握れば、拳に熱がこもった。

すると突然扉の向こうから聞こえた声に立ち上がった。

「トウヤ」

扉が開かれれば、立っていたのは憎き人だった。

ダミアは頬を緩ませると、俺に近づく。

「明日、真王陛下とカザルムに行くのだ、陛下にはお前のことを知らせていない」

「…では俺は行かない方がいいという訳ですか」

「そうゆうことだ」

真王陛下に自分のことを知られていない。

ダミアの考えには裏があると感づいている、行動も自分が動かされる内容でさえ

疑問に思うことがある。

でも自分は、逆らえないのだ。

「待っている間に…そうだな、あやつらを鍛えてやっててくれ」

「……それは、」

あやつら、それはダミアに使える仮面の集団のことを言っているのだろう。

そいつらを思い出すとどうしようもない思いになる。

胸が燃えて、暴れたくてしょうがない思い。

それを知っていてダミアはそう言うのだ、

「嫌か?」

ゆっくりと弧を描いた唇が動いた。

息をすって再度ダミアを見つめると、小さく呟いた。

「いいえ、」

「…そなたは、私の言うことを聞いていれば良いのだ」

受け入れられない言葉を無理やりに身体に流し込む。

まるで毒薬でも飲まされたように麻痺する身体は、

ダミアの思い通りに動くのだ。

そして今日も俺は自分を裏切りながら生きる。



   

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