息を止めるの | ナノ

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「NO NAME、調子はどう?だいぶ慣れた?」

お昼前の見回りに回っていたとき、エリンの声が聞こえたので振り返ると、

そこにはエリンともう一人の教導しトムラさんの姿があった。

それに一礼すると、口を開いた。

「うん、もうだいぶね。」

「でも疲れちゃうでしょ、一日中立っているんだもの」

「ううん、王獣も見れるし、大丈夫」

そう言うとエリンは笑った。

そしてそろそろ時間だとトムラさんと教室に戻っていく。

私はまた見回りを開始した。

もうすっかり雪は降らなくなった、早いものだな、と思っていても気を抜くとまた寒くなる。

警備の仕事を始めてから三日だが、結構仕事に慣れたような気がする。

ここの教導師の皆さんは私の正体を知ってはいるが、素顔までは見せていない。

生徒には明かされていない事実なので、念のため。

でも黒い服に被り物はやはり不信がられるようで、

生徒は話しかけたりしない。

話しかけようとも思わないが、一生懸命勉強している。

そんな姿を見るのがなんだか好きになった。

「!」

聞こえた王獣の高い声が聞こえた方へと目を向けると、

小さな王獣がリランに沿って歩いていた。

「…あれが、」

あれがエリンの言っていたリランの子、

リランはつい最近出産したばかりだと聞いていた。

またリラン達の後ろを歩くいているのが、子の父親と聞いている。

初めて見るその姿になんだか微笑ましいものを感じた。

遠い距離なのでよく見えないが、あれから王獣にはあまり近づかないようにしている。

私のせいで王獣の気分を悪くはしたくない。

あの王獣を遠くで見ているだけで、なんだか安心する気持ちになれる。

数分そこに立ち止まっていたが、息を吸うと、また歩き始めた。

   

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