息を止めるの | ナノ

0701
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「嫌なことを聞いてしまったわね」

「いいえ、」

眉間にしわを寄せて、切なげな表情をしたエサルさんにゆっくりと頬を緩めた。

それにエリンの小さな声が聞こえた気がしたが、

小さなその吐息はすぐに収まってしまった。わざわざ問いかける必要はなかったので

ゆっくりと瞳を閉じると、また開いた。

するとエサルさんはもう戻っても良い。と言ったので一礼して部屋を出た。

部屋を一人で出ると、パタパタと走ってくる音が聞こえた。

それはすぐそばの角から聞こえた音で、小さなその足音はきっと自分とぶつかるのではないかと思った。

予想通りその足音は近くまで来ると、小さな姿を表した。

自分より小さいその姿が自分とぶつかる前に手を差し出した。

「っあ!」

びっくりしたような声を上げてその小さな姿は顔をあげた。

私の手をまじまじと見ながら目があった。それは女の子で、

ここの生徒という証の服を来ていた。

唖然としたように私を見つめる少女に笑いかけると、ふいに瞬きさせてから

すぐに視線を逸らしてぺこりと背中を曲げた。

「ご、ごめんなさいっ」

「いいの、大丈夫?」

「は、はいっ」

やはり少女の視線は自分の髪と瞳に注がれていた、

それにまた笑みを含んだ表情を向けると小さく少女も笑った。

そして後ろからエリンの声が聞こえた。

それに答えるように少女は私に一礼すると横を通り過ぎた。

どうやらエリンに用があった様子だった。

ここの教師を務めていると聞いた、若いのにすごいな。

主席でなければ教師になれないと聞いたので、関心してたのを覚えている。

そして部屋に移動するまでに見えたあの姿。

王獣だった、

無意識に足はその数体の王獣の元へ向かっていた。

心地よい風を感じる、日当たりのよい場所に王獣達は丸くなって瞳を閉じていた。

それに違和感を覚える。

確かにこの王獣は野生の王獣とは少し違って見えたが、

決定的に違うところが一つある。


「…、」


私を警戒しない。

そう判断したときにひどく落胆する自分がいた、

王獣、王獣、王獣。

自分の世界の中心にはいつも王獣がいた、

その壁を乗り越えるために生きてきた私、私たち一族。

私たちにとって気高い王獣は、敵対するものであったが。

互いに認め合うものでもあった。

でも、この姿はなんだ。この王獣達はなんだ。


――まるで違う。


いつからここまで王獣は落ちたのか、

いつから王獣達はこんなに小さくなった。

瞳を閉じても、何も見えない。今ままで見えていた光の柱が見えない。

心地よい風と日差しが自分に降り注ぐ中、だた呆然と王獣を見つめていた。


   

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