息を止めるの | ナノ
生き残った私に罰を1/2
「はぁっ…はぁ……」
深い、深い森の中ただひらすら走ることすらできなかった身体に限界が近づいていた。
もうぼやけて見えない視界はただうっすらと暗闇を移す。
痛みが体中に曲がれるのを、酸素を取り込むことでなんとかこらえていた。
首に流れる汗と共に希望までもが流れてしまうかのように、脱力した心があった。
遂に地面に倒れ込んだ体、肌に感じるはずの冷たい雪を感じれない身体になってしまった
うっすらと見える、厚い雲が覆う空を眺めていた。
正常じゃない呼吸を繰り返す自分を無視して、ただ空を眺めていた。
「母さん…っ…父さぁん…っ…」
かすれた声で呼ぶのは愛おしい家族の名前だった、
認めたくない真実がもうすぐ傍まで迫ってきている。
認めたくない現実が私を追いかける。
浮かび上がるのは誰よりも大切だった家族や仲間、もう戻ることのない夢に成り果ててしまった。
心が苦しくて、心臓を握りつぶされそうなのに痛くない、切ない。
こんな思いをするぐらいならば、いっそ私も一緒にいきたかった。
「は…っ……」
頬に流れる涙も冷たい、暖かいものがどんどん抜けてしまう。
から回る頭の中、パンクしそうな体に響いたのは鳴き声だった。
「!」
堕ちてしまそうな身体に震えを蘇らさせた声。
偉大なものを感じさせ、誰もが認める存在である、そう感じさせるような凛々しく通った声。
「…な…ぁ……、」
うっすらとした視界の中で、一瞬空を覆ったもの。
暗い空を明るく違うものへ変えるように覆ったもの。
王獣。
それに人が乗っている、少しだけ見えた緑色の髪、
それをしっかりと瞳に焼き付けると、呼吸が小さくなっていることに気づいた。
段々と、重くなっていく瞼、必死に起き上がらせようとする意欲させなかったのに
先程の出来事が瞼を上げる力をかしてくれる。
「…どうして、」
死ぬ間際で、なんでこんなものを見せたの?
もう生きれない、そんな気持ちになっていた私の想いを半片させるの?
とうとう落ちてしまった瞼は上がることはなかった、
だがあの王獣の声だけは必死に響いていたのを覚えている。
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