息を止めるの | ナノ
06011/3
「私に、聞きたい話とはなんですか?」
「ええ、」
エサルさんの部屋に通されて、イスに座らせられると、
後ろからエリンも頷いたのが分かった。それにエサルさんは瞳を閉じて、
再度、開いた。
本当は分かっている、聞きたいことがなんのことだか。
「貴方はアルタカの民に間違いないわね」
「はい。」
「…貴方は、深い傷を負って倒れていたとエリンから聞いたわ」
助けられたことは記憶になかったが、
気を失う寸前、王獣の姿を目にした、そして見えたあの緑色の髪はきっとエリンのもの
王獣は、私を乗せたの…?
収まりきれない気持ちがふわふわと浮いている、
「アルタカの民の貴方が、そんな傷を負うはずがないわ」
この言葉がくるだろうと、分かっていた。
自分でも私の一族に傷をつけられるものがいるとしたら、
王獣や闘蛇くらいであると言い切れる。
「…私の村は、襲撃を受けたんです」
「襲撃、ですって…?!」
蘇る、つい最近の出来事。
忌まわしい、記憶。
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