息を止めるの | ナノ

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暑い日差しが自分を照らす中、早足で家に向かっていた。

手に抱える。触り心地のよい布や毛布。今日仕入れたものだった。

これから生まれてくる、自分とNO NAMEの子供のための、もの。

「・・・子供、か」

彼女がここにいるようになって、何日も過ぎた朝。彼女の言葉に驚いた。それは何かの冗談ではないかと、言おうとしたが、彼女の瞳に溜まる涙に、その言葉を喉元まで押し込む

―本当に?

それは紛れもない真実だと、彼女の口から語らなくても、涙を零す彼女の表情からわかった

だが、同時に切ない感覚に襲われる。胸の奥から苦しくなって、顔を歪めた。

ポタポタ、と涙を零す。彼女の涙を拭うこともできずに、ただ呆然と彼女を眺めては、

その子供を宿した腹に視線を移す。そして放たれた声は、ひどく弱くて、弱々しい自分の声。

「君は・・・・・・後悔しているのか」

瞳を見開いた彼女の頬をまた濡らした涙に、瞳を細める。自分の目の前で涙を零す、彼女の理由など本当は聞きたくない。

自分と彼女は、何があっても大丈夫。だと心の中で確信していたのは、俺だけだったのかもしれない。

「何言ってるの・・・?」

「宿したくなかったのだろう」

しばし呆然と自分を見ていた彼女の涙は次第に止むと、その表情は緩んだ。

「違うよ・・・嬉しいの、泣くほど嬉しい」

柔らかな笑顔を浮かべた彼女に、その言葉の意味を確認すると、胸からこみ上げたものが体の中で溢れた

「・・・でも、イアルさんは」

「決まってるだろ・・・、」

細くて白い、すぐに折れてしまいそうな手を握れば、その暖かさが伝わった。

なぜだろう、彼女と自分の子を想像するだけで、頬が緩んでしまう。

自分の今までの人生を、覆すような感覚に、どうしようもなくなってしまう

「こんなに嬉しいことってあるんだな」

そして再度涙を流した彼女の小さな身体を抱き寄せた

   

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