息を止めるの | ナノ

0012
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空を覆うような木々から月の光が差し込む、右手に持っていた剣を月に向ければ

光を浴びて剣がきらきらと輝く。

その様子を見て、口元に弧を描いたNO NAMEは肩より少し長い髪をなびかせて歩いた。

森の中、NO NAMEはゆっくりと歩く、何かを求めるでもない瞳を浮かべて、

ただ前を見ていた。

カサ、と音がした。何がが地面に落ちる音、それは小さなサイコロ。

見覚えのあるサイコロだった、NO NAMEは笑みを浮かべてそのサイコロを手に取ると

後ろを振り向いた。

「カイル、」

「久しぶりだな、NO NAME」

木の影から現れた人物の姿、前と変わらない姿だった。

NO NAMEにゆっくりと近づいたカイルは笑みを浮かべると、NO NAMEのサイコロを受け取った。

「どうしてこんな所に?」

「近くの村で赤い髪の女が森に入ったって聞いてな、もしかしたらって追ってきたんだよ」

「会いに来てくれたんだ」

少し悪戯っぽい表情を浮かべたにNO NAMEカイルは口元を釣り上げたが、すぐに元の表情に戻った。

顔をNO NAMEに近づけると、ゆっくりと口を開く。

「そうだ」

NO NAMEの瞳が見開くと、カイルの顔が笑顔に変わる。

「驚いたか?」

「…うん、だいぶ」

NO NAMEも笑顔を浮かべた。カイルはその後NO NAMEと共に森を歩くことにした。

薄暗いのはずが、月の光で照らされる世界は随分と明るい、

NO NAMEの隣を歩くカイルは瞳を細めて、空を見上げた。

「星が綺麗だな、」

NO NAMEも同じように空を見上げて、頷いた。

月に照らされたNO NAMEの横顔は以前よりも大人びて見えていた、照らされる赤い髪と瞳がきらきら輝いて、カイルの瞳は更に細まった。

「お前、なんで旅なんかしてる」

突然の問いに戸惑うことなくNO NAMEは落ち着いた表情で笑みを浮かべた。

「…私が旅をしていてはおかしいですか?」

「女が人で旅なんて変だろう、普通は…まぁ…お前は大抵の男寄りは強いが、」

自らもため息が溢れてしまいそうな強さを持つNO NAME、

カイルは自分がなぜだか情けない気持ちでいっぱいになっているのを知る。

本当はNO NAMEを追って、ここまでカイルは来た、

自らも仕事を持つ身だったが、あの決戦後姿を消したNO NAMEの噂が耳に入れば

長い休暇を貰ってここまで来た。

その姿を確認した時は思わず息をこぼしてしまった。

「なぜ兄貴と同じ職につかなかった」

兄、トウヤは今、真王セィミヤの命令でエリンを護衛する仕事を任されていた。

同じくNO NAMEにもセィミヤを守る護衛の仕事の話しが来ていたが、断ったという。

だが真王の使者は絶えず、NO NAMEの元に来ていた、

そこから逃げるようにNO NAMEは旅に出た。だが、逃げているわけではなかった。

「…私には、自由が与えられたんです」

「…そうだな、」

今まで世界に縛られた民であったNO NAMEに、やっと自由が与えられた。

「何をしてもいいはずですよね、だから世界を旅しようと思ったんです」

「……そうか」

カイルは何も言わなかった、言いたいことはたくさんあったはずなのに、

何かが喉につっかえたような感じがして。

言い出せない。

そんな二人を月の光は絶え間なく照らし続けた。











 

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