息を止めるの | ナノ

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近づく頭蛇を目の前に瞳を閉じた。

飲み込まれた、もう意識はないと思う。

自分の身体は引き裂かれ、頭蛇に食われるのだろう。


それでもいい、私は、トウヤと自由になれたのだ。



――我、子供らよ


暗い世界の中に響いた低い声、それは頭の中で響きわたる。


―――私の罪と罰をもう背負う必要はない、赤き力を持つ子供ら、お前達は自由だ


優しい声だった、知らないはずなのに懐かしい声にNO NAMEは微笑んだ。

きっと痛みなど感じない、私達は自由になれる――、


―さぁ、瞳を開けるがいい、お前たちは、最後まで…生きるんだよ


「!」

その声に瞳を開ければ、青い空が見えた。

眩しい太陽が昇っていて、自分の赤い髪を照らしている。

「生きている…」

起き上がれば、周りには自分を食らっていたはずの頭蛇達が倒れていた。

死んではいない、ただ戦う意識をなくしたように倒れていた。

「何が、起こった…?」

起き上がったトウヤは訳が分からない、と言った表情で起き上がる。

しっかりと握られた手をもう一度強く握ってNO NAMEは微笑んだ。

「…私たちの始まりの神が助けてくれた、」

聞こえた、あの声。

知っている、あの声。


神は罪も罰も呪いも全て私達から奪い去ってしまったようで、

NO NAMEとトウヤは微笑み合うと、



また新しく生きることを誓った。



















「二人は、生きているわ!!!!」

「なに?!」

エリンの言葉にイアルは目を見開いたが、視線の先には確かに二人の姿があった。

倒れている頭蛇だったが、イアルの足は自然とNO NAME達に向けて走り出していた。

その後を駆けるようにしてエリンも走り出す。


「NO NAMEっ、トウヤ!!!!」


二つの名前は広い世界に響いた。



彼は、生きていると、世界が教えてくれるようだった。








赤き戦闘民族、掟に縛られ、世界に縛られた民は、

変わりに二人の兄妹が世界を生きたという。
















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