息を止めるの | ナノ

2002
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「なんだ、鈍ってないじゃないか」

「カイル!」

降臨の野の近くに建つ、真王の館に近づこうと潜んでいたイアルの耳に入った声は

よく知った声だった。

振り向けばあの日逃げ別れたカイルの姿、カイルは小さく笑みを浮かべると、

イアルに視線を合わすようにしゃがみこんだ。

雪が激しく吹き降りる中、二人の男は真王の館を見つめる。

それを守るように囲む仮面の男達の姿にイアルは顔を歪める。

「いくらお前でも死にに行くようなもんだろ、安心しろ俺が付き合ってやるぜ」

力強く言ったカイルだったが、イアルの視線はカイルへはいかなかった。

それを不思議に思ったのかカイルはイアルの瞳を見つめる。

「けが人は足でまといだ」

「それはお前もだろ」

二人とも所々に包帯がまかれていて、痛々しい生傷が身体に残っていた。

「お前には感謝している、だがここから先は俺の手でケリをつけたい」

「お前…」

雪で視界が遮られる中、カイルの瞳に写っていたのは穏やかに微笑むイアルの姿だった。

見開くカイルの瞳、イアルは小さく唇を動かし始める。

誰かを想うように開かれた瞳が、輝いて見える。

「俺はこの国を守る、あの子を縛る運命に決着をつけに行くんだ」

それは確かな意思のこもった言葉だった。

以前のイアルからは想像のできないイアルの笑顔にカイルは息を吐き出すと、

困ったように微笑んだ。

「…なんだ、お前、ちゃんと笑えるじゃないか」

「……どうゆうことだ、」

「気にするな、これもNO NAMEのおかげかな」

「NO NAMEは関係ないだろう」

呆れたようにカイルはイアルを見つめると、瞳が細まった。

「悪いが、俺とお前は敵対しなければならないようだ、だから俺はさっさと退散するよ、じゃあな」

にこやかな微笑みを浮かべたカイルはそう言い残すと、イアルの前から姿を消した。

もうないカイルの姿を見つめながらイアルは顔を歪めた。

「…敵対……?」







 

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