息を止めるの | ナノ

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「…あんた、追われているな…大丈夫か?」

トウヤは目の前で地面に倒れているイアルに瞳を細めながら話しかけた。

王獣舎のすぐ裏で見つけたイアルの姿、近づいてくる数人の仮面の男共の気配を感じる。

「(確か、警備隊長と言っていたけどな…)」

今は亡きハルミヤ様の警備隊だったのなら、ダミアは邪魔な奴を追い出しかねない。

トウヤは返事のないイアルにふっとため息をつくと、その肩の間に手を差し入れて、

ゆっくりとイアルを背負う。

「……だ、れだ…」

真っ赤に染まる服、小さく瞳を開いて、枯れ果てた声を放ったイアル。

「…あんたはNO NAMEの無事を教えてくれた、だから助ける」

「…NO NAME、そうか…トウヤか、」

イアルは小さく笑う、

王獣舎へイアルを運ぶと、エリンは驚いたように声を上げたが、

すぐに治療を始めた。

無残な傷跡を見つめながら、トウヤは壁に寄りかかりながら、治療を見ていた。

落ち着いたイアルはやがて小さな息をたてて、眠りに落ちる。

「…あんたも休んだらどうだ」

「でも、」

「いいから…俺が追っ手を追い払う」

エリンも察してた。

追っ手にやられたであろうこの傷、血の後を追ってここへもくるだろうと。

トウヤは小さく笑みをこぼすと、王獣舎の外に出た。

しばらくすると、奥の森から5、6頭の馬がやってきた。

見えたのは仮面の男達とそれにまぎれてやってきたダミア、ダミアは怪しい笑みを浮かべると、トウヤを見つめた。

「トウヤ、ここにイアルがいるだろう?」

「…いない、もう去った」

「…去った?」

「エリンが手当をして、もうとっくに逃げたよ」

その言葉にダミアは微笑みを浮かべると、トウヤに近づいた。

「…嘘をつくな、トウヤ…分かっているだろう?」

「……嘘なんか、つくかよ」

瞳を細めた中、底光りする真紅の瞳、そこから殺気と共に、

ダミアを地面へ押し付けるかのような威圧感が漏れ出す。

「……ふ、まぁいい…行こう」

ダミアは顔を歪めてトウヤを見つめると、また馬に跨った。

同時に仮面の男達もまた森へと入っていく。


 

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