息を止めるの | ナノ

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昔の思い出を今を鮮明を思い出す。






「ええ、はい……え?うちの娘を?!?!」

鍛錬をして帰ってきた夜、家の中で聞こえた母の声にびっくりした。

普段威厳がある母からはめったに出ない声だった、話しの内容が気になって、扉に近づいてみれば、扉が少し空いていた。

客人がいるようで、母はなんだか顔を嬉しそうにほころばせていた。

「でも……あの子は戦闘民族の子、貴方を守るべき存在ですよ」

「いいんです、俺はあの子に惹かれてしまったから」

優しそうな声が聞こえた、その声の主へと視線をうつしてみると、

自分の瞳が大きく見開くのを感じる。

「(霧の民…、)」

緑色の髪に緑色の瞳、霧の民の若い男だった。

端麗な顔立ちに、優しそうな目元をしている。


「あの子で、いいのですか…?もっと良い人が、それに違う民とは交じり合ってはいけないはずでは」

「それは問題ありません、話は通してあります。赤い民のNO NAMEを嫁に貰いたい、そう言ったら仕方がない、と言ってくれました。
それほど貴方の娘さんは有名ですよ」

「そんな、もったいないお言葉…ありがとうございますっ」

唖然とした、俺の妹を嫁に貰うつもりか。

胸の中で渦巻く気持ちに思わず、剣を抜いてしまった。

そして話しが済んだようで出てきたあの霧の民の男へと剣を差し出した。

「おい、妹は嫁には出さない、まだ18にもなってないんだ」

「…君はNO NAMEのお兄さん?」

動じない男に怒りがわいたが、NO NAMEの名前を軽々しく口走ったことにまた怒りが沸いた。

「そうだ、」

「…では、貴方の妹さんを貰いたい、真剣な気持ちだ」

「黙れよ」

男の言葉に反発するかのような言葉、忠誠を誓わなければならない存在だと知っての行動だった。

掟を破れば、俺は死なねばならないが、妹のために死ぬなら本望だ。

「NO NAME18になるまで君を説得しねくてはいけないね」

そう行って優しい微笑みを浮かべて男は立ち去ってしまった。

追いかける気力もなく、息を吐き捨てた。

NO NAME18になったらNO NAMEと一緒に旅に出ようかと本気で思ったこともある。

NO NAMEには伝える前に村に襲撃されたので、結局結婚の儀はなしになっただろうが、

その引換えたものが大きすぎた。

村全部の命分。

母も父も兄も妹もいなくなってしまった、



だが、光が生きていた。

大切な妹が生きていた。





残酷な考え方だが、村一つの命で妹の命が助かったならば、


俺は許せてしまう気がして、恐かった。















   

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