息を止めるの | ナノ

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「どうしたの、リラン」

突然王獣舎の檻の中で、立ち上がったリラン、後に続いてエクもアルも立ち上がる。

そして小さな唸り声を上げ始める。

他人を近づけた時の警戒とは訳の違う警戒。

本気で殺そうとしている警戒、自分と同じ気配を感じ取っている警戒。

全てNO NAMEが目の前にいた時と同じ警戒だった。

「まさか、」

NO NAMEもここにいる。それは分かっていた、だからこそこの王宮へやってきた。

ここへくることは拒否できなかったが、NO NAMEの姿を見たい、という意思もあった。

思わずエリンは立ち上がり竪琴を置くと、扉を開く。

その瞬間見えた赤い髪にエリンは頬を緩ませようと思ったが、

思ったより高い位置に見えた赤い髪に動きを止めた。


「…、」

息を呑み込んだ、NO NAMEじゃないその姿、背の高い男、赤い髪で赤い瞳。

その瞳が交差した時、心臓が止まるかのように、息もできなくなった。

こみ上げる感情に、思わず声を漏らす。


「…あんたが、エリン?」

「そ、うですけど…」

「霧の民か」

その言葉にエリンはNO NAMEの初めて会ったときの行動を思い出した。

彼がもしかしてNO NAMEと同じアルタカの民ならば、

同じ行動をするのかと思った。

だが違った、彼はエリンを見下ろして、瞳を細めた。

「悪いが、俺はもう掟には縛られない、何も縛られたくないんだ」

その言葉が、ひどく残酷に聞こえたような気がした。

心臓を握りつぶされそうになるかのような心の痛みに、エリンは思わず顔を歪めた。

「…私は霧の民じゃないわ、母がそうだったけど…私自身は違う」

「そうか」

「貴方、は…?」

「俺はトウヤ、あんたの護衛につくことになった」

「護衛…、」

「どうやらダミアはよっぽどあんたに逃げられたくないらしい」

不敵な笑みを浮かべたトウヤにエリンは瞳を細める。

「あいつの言うことを聞くのは本意ではないが、今は理由がある。だからお前を守ろう」

縛られた運命の中での選択、それは本当に彼を縛っているように見えた。

彼はやりたくないことはやらない人に見える、それでも私を守ろうとするのは、

何か大切な理由があるから。

「(それは私も、同じ)」

「分かったわ、」



 

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