息を止めるの | ナノ
17022/5
「トウヤ、お前にはエリンの護衛についてもらう」
「……今更、何を」
暗い部屋の中、壁に寄りかかるトウヤに話しかけたのはダミアあった。
ダミアを見上げる目線は殺気を帯びている。
「そなたに逆らう勇気があるのか?」
トウヤは瞳を細めると、小さく頷いた。
「……分かった、」
思い浮かべるのは大切な妹の姿、死なせるわけにはいかない。
足枷を外されると、トウヤはダミアに向き直る。
「……エリンってのは、誰」
もう前までのような忠誠心はない、前も忠誠心はなかったが、ある程度ダミアを下から見上げていたが、
今はもう、目の前の人物がにくくてたまらない。
「…獣の医術師だよ、素晴らしい才能をもった娘だ」
ダミアの唇が弧を描くと、トウヤは息を吐き出した。
「(その子もまた、縛られているのだろうか)」
だとしたら俺と似ているかもしれない、運命も何もかも違っていても。
ここに縛られれば、同じことになる。
「NO NAMEには、」
「NO NAMEはセィミヤの護衛についてもらっている…エリンとセィミヤの目通りは禁止になっているから…お前たちも会えまい」
「……、」
「安心するがいい、大事なセィミヤの優秀な護衛を簡単には殺さんよ」
トウヤはそれに頷くと、指定された王獣舎へと向かった。
王獣舎の扉の前に立った時、感じた王獣の気配。
外の草で寝ている王獣とはまったかう地学気配。
「(野生の王獣と同じ)」
久しぶりの感覚だった、高鳴る鼓動、今すぐ剣を抜いてしまいたい衝動に駆られる。
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