息を止めるの | ナノ

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まさか、NO NAMEがアルタカの民だったなんて、

イアルは気持ちを整理できないでいた。

ぼーっとしていうイアルの横にきたのはカイルだった。

屋敷を警備中の二人だったが、イアルの雰囲気でカイルは息を吐いた。

「おい、イアル…」

「…なんだ、」

「あの子のこと、気になるのか」

イアルは瞳を細めた、

もう一人、アルタカの民はいる。

そして頭の過ぎる、あの赤い炎。逃れる一人の人間を。

それは、あの二人のどちらかなのか。

「NO NAMEは、どうなるんだろうな」

カイルの言葉にイアルは不信そうな顔をしたので、カイルは笑った。

「あぁ、運ばれているときに少し話しててな、悪い子ではなかったよ…

ただ、まだ若いのにこんな所に連れてこられて災難だろうな」

「…そうだな、食事を届けに行ってくる」

イアルが向かったのは、トウヤが居る屋敷。

そこへ食事を持って、行く。

「入るぞ」

扉を開けば、薄暗い部屋の中にいるトウヤを視線をうつす。

彼は瞳を細めて、壁に寄りかかっていた。

NO NAMEとは違い、足を鎖で繋がれたトウヤは自由など許されていなかった。

食事も口にしない。

「俺は何も食べない、出ていけ」

身体は弱っているはずなのに、殺気や威圧感は変わらずにそこにあった。

赤く燃え上がる瞳は底光りしている。

何も言わずに食事を置いて、出ていこうとした時、トウヤの小さな声が響いた。

「なあ、NO NAMEを知ってるか…?」

思わずイアルの足が止まった、振り向くと、トウヤは小さく笑っていた。

初めて見た、笑顔を。笑わずただ殺気を身にまとっているトウヤは笑うことなどしなかった

「…あぁ、もう一人のアルタカの民、隣の屋敷に居る」

「無事か…?!」

底光りする瞳がこちらに向くと、イアルは頷いた。

すると安心したようにトウヤは微笑んだ。

その柔らかい微笑みがイアルの胸を強く突き動かす。

「……そう、か…良かった」

弧を描いた唇が、NO NAMEに似ているような気がした。




 

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