息を止めるの | ナノ

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「NO NAME、私は一旦カザルム学舎に薬を取りに帰るわ」

「じゃあ私はここでけが人の手当てを手伝う」

エリンは頷くと、リランに乗り込んだ。

NO NAMEを見て、唸りをあげたリランにNO NAMEは微笑みを浮かべた。

そして風が舞うと、リランは飛び去って行った。

「NO NAMEー!」

「トムラさん」

後ろから走ってきたのはトムラだった、手には薬品や包帯を持っている。

NO NAMEはトムラを見上げると、トムラは胸をなでおろす。

「良かった、NO NAMEは怪我をしてないな」

「はい、それより堅き盾の人達を」

「ああ、」

トムラは力強く頷くと、けが人の元へ向かった。

NO NAMEはカザルムの船が来ていることを確認すると、けが人たちを船に運ぶのを手伝った。








***






カザルム河の館に真王陛下は運ばれ、怪我をした人たちもそこに運ばれた。

NO NAMEは唸り声の聞こえる部屋の中の隅に人の治療を行なっていた。

「闘蛇が…っ…真王陛下!!!」

そんな言葉が耳に入るたびに、瞳を細めた。

「…く、」

苦しそうな目の前の人の胸に包帯を当てながら、大丈夫ですよ、と言い聞かせるが

恐怖の色は消えなかった。

治療が終わると、部屋の扉が開いた。

緑色の瞳が顔を出した、NO NAMEはエリンと名前を呼ぶと、

エリンは微笑んで頷いた。NO NAMEも頷くと、エリンは当たりを見回して

顔を歪めた。

エリンの耳に入るのはけが人達の唸り声や叫び声。

エリンは座り込むと、持っていた竪琴を奏で始めた。

「……、」

一通り治療の終わったNO NAMEは壁に背を置きながらゆっくりと瞳を閉じた。

「(なんて、きれいな音なんだろう)」

恐怖も、辛いことも和らげるようなその音が心地よい。

時代に叫び声をあげていた人も眠りに落ちていた。

するとNO NAMEの隣に同じく腰を下げてきた男、カイル。

それにNO NAMEは気づくと小さく息を吐いた。

「なんですか?」

「なんだ、その言い方は。」

「いえ、別に…」

カイルも同じように息を吐くと、横目でNO NAMEを見た。

「ただ俺はお前の正体を知りたいだけだ」

「…だから、警備員って言ってるじゃないですか」

「だから、普通の警備員があんな真似できるかよ」

永遠に続きそうな会話にNO NAMEは諦めたのか、また息を吐き出した。

「手は、大丈夫ですか?」

「たいしたことない」

「良かった」

NO NAMEの唇が弧を描く、それにカイルは瞳を細めると、素早くNO NAMEの被り物を取った。

「ちょ…っ」

取られてしまった被り物から露になるのは赤い髪だった。

カイルの瞳は大きく見開かれると、赤く光る瞳がカイルを見上げる。

「な……っ…嘘だろ」

素早くNO NAMEはまた被り物を付けると、カイルに怒りの声をあげる。

「何するんですか」

「い、や……」

カイルは小さく息を飲む。

これは怪しい奴ですむ問題じゃない。

大事だ。


 

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