息を止めるの | ナノ
13022/3
「後ろにいるぞ!陛下を守れ!!!!」
強い声に堅き盾の者達は頷いた。
後ろから侵入しようとする闘蛇に矢を射ても、その硬い皮には適わない。
「くそっ…」
イアルが自らの剣を抜こうとした時、目の前に現れた人物。
それはあの警備員、NO NAMEだった。
「なぜ貴方が?!」
その言葉と同時に横に伸ばされた手は、イアルがこれ以上踏み出ることを許さなかった
NO NAMEがゆっくりと自らの剣を抜くと、王獣に差し出した。
「無理だ!やめるんだ!!」
イアルがNO NAMEを止めるよりも早くNO NAMEは動き出していた。
同時に闘蛇の爪もNO NAMEにむいている。
間に合わない、そう思ったとき、視界が真っ赤に染まった。
一瞬だった、イアルが動くよりも早く闘蛇の頭は切り裂かれていた。
ゆっくりと見開く瞳、イアルの視界に移ったのは地面に着地したNO NAMEだった。
その剣は真っ赤に染まっている。
「(たった一撃で、闘蛇のあの硬い皮を切り裂いた…)」
その時、空高くから獣の鳴く声が聞こえた。
「あれは…王獣?!」
王獣が人を乗せて飛んでいるのをイアルは目にする。
「エリン!リランを闘蛇に近づけさせてはいけない!!!」
「エリン…?」
NO NAMEが叫んだ言葉の中にあった名前、エリン。
確かにそう言ったNO NAMEにイアルは王獣に乗っている人に視線を向けた。
緑色になびく髪は間違いなくエリンのものだった。
そしてその言葉の意味とは、と考える前に。
王獣は闘蛇に食らいついていた。
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