息を止めるの | ナノ

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「NO NAME、これから自然観察に行くんだけど、丘の上は生徒達には危ないから一緒に来てくれるかしら?」

真王陛下が来てから翌日、エリンからNO NAMEに声をかけられた。

丘の上に行くというなら真王陛下の御座船でも見に行くのだろうかと

NO NAMEは思い、頷いた。

「お、NO NAMEも行くのか?」

「はい、」

「そうか、生徒達をよろしくな」

トムラはNO NAMEに微笑むと、NO NAMEの頬も緩んだ。

NO NAMEは生徒たちの群れの最後列につくのをエリンは確認すると、

横で歩いているトムラに話しかけた。

「NO NAMEのことはもう怖くないのですか?」

トムラはそれに苦笑するとなんだか恥ずかしそうに口を開いた。

「いや、NO NAMEに素顔を見せてもらったんだけどな…全然怖そうな顔してなかったからな」

むしろ…とトムラは言いかけたが、エリンの笑い声に打ち消される。

「NO NAMEはいい子ですよ」

「あぁ、今ならわかるよ」

よく考えれば、女性なのに警備員とは厳しい仕事だとトムラは思う。

一日中立って、辺に気を配らなければならない。

自分なら半日で気が抜けるが、NO NAMEが脱力した姿をみたことがないトムラ。

「さすがはアルタカの民…だなあ」

息を吐くと、生徒達がわらわらと走り出す。

「こら、危ないぞ!」

もう丘の上に付いていた、生徒達の視線の先は川に向けられる。

「御座船だぁ!」

見えてきた大きな船に瞳を輝かす生徒達だったが、

NO NAMEは違った。

NO NAMEの異変にエリンが気づいたのか、声をかけると小さな声で呟いた。

「闘蛇、」

「なんですって?!」

NO NAMEの指さした方向に小さくだが闘蛇の群れが見える。

「多い、なんて数」

「本当…っ…」

「エリンっ?!」

走り出したエリンが向かう方向はカザルム学舎だった。

丘を下っていくエリンの後ろをNO NAMEは追っていけば、やはり向かうのは王獣の元だった。

「エリン、待ってっ」

リランに乗ろうとしているエリンをNO NAMEは呼び止めれば、

エリンの視線はNO NAMEに向くと、NO NAMEは小さな声で言葉を放った。

「真王陛下の前で飛べば、貴方は…」

エリンも分かっているはずだった。

だからこそ表情を変えないエリンにNO NAMEは息を吐く。

「貴方のいうことには逆らえない、私も行く。」

エリンは息を飲むと、頷いた。

だがリランは違う、NO NAMEに向かって警戒する声を放つ。

「リラン、お願い。NO NAMEも乗せて」

エリンの声でも収まらないリランにNO NAMEは向き直ると、

はっきりとした声を放つ。

「貴方の主を守りたい、それだけよ」

その声にリランの警戒する声は徐々に小さくなると、

地面に座り込んだ。

認めたわけではない、エリンを守るためなら。

そう言っているような王獣の表情にNO NAMEはゆっくりと微笑んだ。






   

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