息を止めるの | ナノ
12033/4
カザルムを立ち去っていく真王陛下達を遠目で見る。
その姿が完全に消えると、皆の緊張が溶けたように、脱力姿が見える。
そして同時に背後に近づくエリンの気配に振り返れば、
そこには複雑そうなエリンが立っていた。
「なんであんなことをしたの?」
“あんなこと”とはNO NAMEがダミアに剣を向けたこと。
NO NAMEは変わらぬ瞳でエリンを見上げると、強い口調で言葉を放った。
「私はエリンに忠誠を誓ったの、真王陛下でもダミア様でもない」
それにエリンは息を吐き出すと、お手上げのような顔でNO NAMEを見た。
「はぁ…もう、またそうゆうこと言う…」
「これだけは譲らないよ」
「それでも私と貴方は忠誠なんかなくても…」
そう言いかけたエリンにNO NAMEは首を振った。
「違うよ、私はアルタカの民、誰かに忠誠を捧げなくては生きられない種族なんだ」
たとえ民が滅びたとしても、
それだけは変わらない。
NO NAMEを縛るのは掟ではない、自らの意思。
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