息を止めるの | ナノ
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エリンのいる王獣舎の方へと歩いていくと、
見知らぬものの気配を感じた。
後ろに、誰か…いる。
だがそのまま歩を止めずに、その者の気配を感じ取る。
…この気配は確か、陛下に使えていた…確か堅き盾といった…
考えながら王獣舎をのぞき込むと、自分の瞳が見開かれた。
王獣の警戒する声はいつもと違っていた。
そしてエリンに迫るダミア様の姿。
エリンの表情は歪んでいた、
心臓が揺らぐ、脈を刻む。
「……離れろ」
地面をけるとダミア様に自らの剣を向けていた。
それに驚くエリンのと、気づいたダミア様はゆっくりとエリンから離れた。
「…お前は、ここの警備員だったな…私に剣を向けることはどうゆうことか分かっているのか」
「分かっていますよ…ですが立場なんか関係ない、エリンに手を出す者には容赦などしない」
その言葉にたじろいだダミアは一歩足を後ろに下げた、そして思い出したかのように
微笑みを浮かべると口を開いた。
「それはこの者が霧の民だからかい?アルタカの民の一人よ」
「……違う、」
なぜ知っているかなんて関係なかった、ただ今は怒りが自分の中にある。
「NO NAMEっ私は大丈夫だから、やめて…」
エリンを見ると、必死そうな顔が目に入った。
それを見ると、自分が抜いた剣を鞘に収める。
そして息を吸うと、ダミア様に向き直った。
ダメだ、これだとエリンが困ってしまう、エリンの立場までなくなってしまう。
「どうか、ご無礼をおゆるしください…」
被り物を取ると、私は深々と頭を下げた。
「やはり、アルタカの民か」
「はい、」
顔を上げると同時にダミア様の目は見開いた。
「な、なんて…美しい娘だ、そなたのような娘、見たことがない…」
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