息を止めるの | ナノ
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「…あぁ、君か」
「…あの、エリンを見かけなかったでしょうか」
廊下を歩いていたトムラさんに話しかけると、驚いたように振り返ったトムラ先輩。
「エリンなら王獣舎の方にいるはずだ」
「ありがとうございます。」
「な、なぁ君の素顔を見てはいけないだろうか?」
「……私は、」
「素顔が見えないとどうも怖くて…同じ職場にいる仲間なのだから、
そうは思いたくないんだ」
そう言ったトムラさんの言葉がすっと胸にはいると、
なんだか穏やかなものを感じた。
「分かりました」
すっと被り物を外して微笑むと、トムラ先輩は瞳を見開いた。
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