息を止めるの | ナノ

0703
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「ごめんなさい…、」

抱きしめられた身体、顔をゆっくりと上げるとエリンの瞳は細まった。

そしてゆっくりと唇は動いた。

「この王獣達は悪くはないわ、二度とあの出来事を繰り返さないようにするために犠牲なのよ…全ては私たち、人間のせいなの」

「人間の、せい…?」


昔、父さんから聞いた話があった。

私たち一族は闘蛇を操る緑ノ目ノ民に忠清を誓っていた。

そして大きな戦いがおこる、もちろん私たちはその戦いに参戦して、

有利と思えた戦いだったが、そこで金色ノ目ノ民が操る王獣が舞い降りたと言っていた

圧倒的な王獣の強さを目の前に手出しができなかったという。

それから私たちの民は王獣を目標として、この力を受け継いできた。

エリンが話したのは悲惨な王獣の姿と、

金色ノ目ノ民、王祖ジェの真意を知った。

そこで王獣規範という王獣を縛る掟ができたという。

全ては王獣を争いに使わせないため、

「でも私はリランをそんな掟にしばりたくない…っ」

目の前にいる王獣達は空を飛べないという。

兄達と見た王獣の羽ばたく姿を覚えている、エリンとリランが飛んでいた

あの映像も鮮明に残っている。

それができない。

胸にできた水たまりが少しずつ流れ出していくようだった。

エリンは願っているのだ、王獣の気高い姿を。

飛び立つ姿が当たり前になるように。

「………エリン、」

落胆した自分がバカげているように思えた、王獣に向けた思いが今は恥ずかしい。

そしてゆっくりとエリンを引き離すと、

自分の剣を鞘から抜いた。

それに瞳を見開いたエリンを見つめると、その剣をエリンに差し出した。

「な、にを…」

エリンが一歩後ろに下がった瞬間に、大きな振動が近くでした。

同時に朝聞いた王獣の声がした。

それはリランだった。

剣を向ける私に鋭い睨みを向けると、警戒するように唸る。

あの時と同じ、今にも襲いかかってきそうなその姿に胸が高鳴る。

心臓が早くなっていく、それがとてつもなく嬉しい。

「…貴方の王獣は気高い」

そう言ってエリンに視線を戻すと、濁ったエリンに笑いかける。

そして腰を下ろすと、剣を地面に力強く突き刺した、

両手で剣を持ちながら、深く頭を下げた。

「再び忠誠を誓います。貴方の考えを正しいと思う、

エリン、私は貴方と共にありたい。」

それは紛れもない忠誠の証。

前とは違っていた、霧の民は私を縛る鎖ではない。

同じ思いを抱く者なのだ。



だから私はエリンに忠誠を誓おう。

王獣のために生きる貴方を守りたいと

共にありたいと思えるから。




   

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