息を止めるの | ナノ

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「この王獣達は…警戒しないのね、」

さっきから感じていた視線だったが、あえて口には出さなかった。

そしてようやくその視線の先のエリンは私に近づくと、

言葉を発した。彼女も気づいているようだった。

「この王獣達は違う。王獣ではない」

「…それは、それはしょうがないことなの」

私の言葉にすぐさま言葉を返したエリンの表情を見つめていると、

ひどく悲しげな顔をしていた。

何かをいいたそうな顔をしたが、口は開かなかった。

“しょうがない”

その言葉がひっかかる。エリンほどの王獣の使い手である者が

そう言うのだ、何か理由があるはず。

だが自分から知りたいとは思わなかった。

「…私は、王獣を目標に生きてきたの」

突然飛び出した言葉に自分自身もびっくりした。

ただ落胆した胸のせいか、ひどくあの過去を思い出す。

過去と言えるほど昔のことではない、最近のことだ。

なのに自分の過去にしてしまいたい。消え去って欲しい。

それは叶わないから自分の中でぐるぐると回る想いは収まらない。

ずっと回り続けてどうなってしまうかわからない。

これは恐怖に似た感情。

「王獣を目標に…?」

「私の一族は皆そうだった、」

王獣と対等な力を持っていた一族だったが、

どこまでも気高い王獣に憧れていた。

「でも…この王獣は違う、私たちが憧れたものではない!!!」

理由は知りたくはなかったが、収まらない気持ちは破裂しそうだった。

自分はそれだけを目標に生きてきたのに、

全てを失った私にはそれしかないのに。

当の王獣達は変わってしまっていた。すりつぶされる思いだ。

闇の中に捨てられ、フタをされたような気分。

もう逃げることはかなわないような、そんな思い。

王獣を見つめる瞳が険しくなったのを自分でも感じた、

その瞬間視界は揺らいだ。感じた暖かい感覚と背中に回った手に瞳を瞬きさせる。




 

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