息を止めるの | ナノ

0602
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「おい、NO NAME。」

一人でいたはずの森の奥、後ろからかられた声にびくついた。

それは知っている声でゆっくりと後ろを振り向くと、そこには兄の姿があった。

兄は歪んだ顔で私を見つめると、低い声で言葉を放った。

「お前、ここがどうゆう所か分かっているのか」

「……うん」

兄は今怒っている。すぐに分かった。

自分は今いけない事をしているから、滅多に出さない低い声に思わず背筋が震えた。

そして兄はゆっくりと私に近づくと、呆れたように息を吐いた。

「まったく…母さんに知られれば怒られるぞ…」

「…分かってる、それでも、それでも強くなりたかったから」

それは自分の正直な言葉だった。

そしてふいに感じた感覚、兄は私の頭を撫でていた。

その優しい感覚に瞳を閉じる、

「しょうがねぇ、母さんには言わないが、そのかわりに…俺と勝負だ」

「……分かった。」

楽しげな表情で兄は自分の持っていた剣を鞘から抜いた。

それはまぎれもない真剣で、太陽の光で反射した。

私は兄の剣が羨ましかった、兄の長く、細く、美しいほどに輝いていたからだ。

「じゃあ勝ったら、その剣をくれる?」

「バカ言え、誰がやるかよ。」

私も自分の持っていた剣を鞘から抜く。自分のものも真剣だが、

兄のお下がりであった。それでも他の人のより立派だったが、

私は兄の美しい剣に憧れていた。

18になれば長老様から直々に自分に合った剣を渡される。

「お前ももうすぐだろう、」

そう、自分ももうすぐ渡される予定だったが、兄の剣がひどく羨ましかった。

息を吐いて、高鳴ってくる胸を抑える。

「いくぞっ、」

目の前にいた兄の姿が消えると、すぐ後ろで気配を感じた。

「っ…、」

後ろから降り下ろされる剣をかろうじてよけると、兄は攻撃のスキをあたえないほど

早く剣を降ってくる。

攻撃するスキがない…。

昔は兄の攻撃はよけるのが精一杯だったが、自分も毎日剣を降ってきた、

もう昔とは違うはず。

一瞬の兄のスキを見抜くとその瞬間に剣を突き刺した。

「おおっ、」

兄はそれをよけたが、それ以上攻撃はしなかった。

そして微笑んだ表情を見せると、自分も頬を緩めた。

「強くなったじゃねーか」

「それも、ここのおかげだよ」

そう言って苦笑したが、鼻についた匂いに顔を歪ませた。

兄も気づいたようで、同じく剣を鞘に抑えた。

それは物が焦げたような匂いだった。

そして私と兄は目を見合わせると、地面を蹴って離れた村へと向かった。

焼けるような匂いは村のほうからした。

嫌な予感と脈打つ心臓を抱えながら、私ははしった。

 

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