息を止めるの | ナノ

0052
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イアルの家に訪れれば中々開かない扉、中に気配はあるのに、と不審に思って無理やり開ければ、見えたのは彼女の姿、そして一気に青ざめる心があった。

「・・・・・・くそ、」

どうしてもっと早く行動しなかったのか、自分でもよくわからない。

なぜだろう、彼女をはじめに見つけたのは自分なのに、どうしてイアルにわざわざ居場所を教えたりしたのだろう。

無駄なおせっかいのはずだ、自分にも有利になることをは一つもない。

どうしてだ、もしかしたら彼女の隣にいるのが自分だったかもしれない。

彼女が嬉しそうに話す子の父親が自分であったなら・・・、そこまで考えて頭の中をぐちゃぐちゃにする。

「・・・、」

見ていられなかった、彼女の顔色が明るくなって、俺に見せたことのない笑顔を見せて、嬉しそうに語るこれから生まれるであろう子供の話。

でも、悲しい以上に自分に情けなくなる。俺は一体何を求めていたんだろうか、

こんな感情を彼女に当てつけるために、今まで・・・想ってたわけじゃない

気高く戦って、それでも笑う彼女を、強いのにどこか弱い彼女を見てきて、

俺は・・・、

「カイル!」

後ろから聞こえた声に振り返ればやはりそこには彼女の姿があった。どうして、だなんて口にする前に駆け寄れば、彼女は眉を寄らせる。

「・・・ごめん、私何か嫌なことでも・・・言ったんでしょう」

ああ、なんで。こんな顔をさえてしまったのだろう。俺は、違うじゃないか。

こんなの求めていない、違うんだ。

「すまん、俺のせいだ・・・お前のせいなんかじゃないんだよ、これぽっちもな」

「じゃあ、なんで・・・」

「俺はお前が好きだった」

声も出ないと言った顔で俺を見上げた彼女にふっと笑うと、その肩に手を触れさせる。

華奢なこの身体に、どうしてあんな力があるのか・・・と思いながらも彼女を見下ろす

「・・・ごめんな、」

「カイル・・・」

「いいんだよ、分かってる。だからさ・・・お前はイアルと幸せになれ!」

その時の彼女の泣きそうな笑顔に、モヤモヤしていたものが晴れていくような気がした。



――泣きたのは、こっちだよ



なんて言えるわけ無いだろう、


そんなこといえば彼女は泣いてしまうだろうから



   

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