息を止めるの | ナノ

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布団の上で正しく呼吸をするNO NAMEの姿を眺めては、息を吐いた。

「…全然浅くなかったじゃないか」

NO NAMEの腹部いあった傷は浅くはなかった、剣で貫かれたような傷跡、なのに傷はもうほとんどふさがっている。

これもアルタカの民の生命力だと思うと、関心するが、今はそんなことを思っている暇などない。

どうしてこうなったのかが問題だった。

自分の目の前で闘蛇を切り裂いたあのNO NAMEが、剣で貫かれることなんてあるのだろうか。

それにあの追っ手は誰なんだ、と疑問ばかりが頭を侵食してくる。

「……、」

白い頬を撫でれば、瞳は細まる。

どうして彼女は危険ばかりを隣合せに生きているのだろうか。

自分は、何を…あの時思ったのだろうか。

「イアル、さん」

NO NAMEの瞳がうっすらと開けば、イアルの名前を呼ぶ。

閉じかけていたイアルの瞳が開くと、NO NAMEの姿を確認する。

「あの、ありがとうございました」

「いや、それより大丈夫か?辛くないか、」

「全然平気ですよ、舐めないでください」

少し笑いを交えた言葉を軽々と囁くNO NAMEの表情はつもより青白く見える。

「傷はまだ治ってない、身体は起こさない方がいい」

「はい…、」

おとなしくク頷いたNO NAMEは、じばらく口を閉ざしたが、数秒して息を吐き出した。

「あの…理由聞かないんですか?」

“理由”男たちが倒れていた理由、傷の理由

「……話したくないなら、別に話さなくてもいい」

嘘だ、全て、知りたい。

なぜこんな危険な目にあっているのか、納得するまで離して欲しい。

でもそんな事、口が裂けても言えるはずがない。

自分はそんな立場じゃないんだ。彼女の何者でもない。

胸が痛むようなことは、何も…ない。

「…話します、」

「ああ」

NO NAMEは小さく笑うと、ぼんやりと天井を眺めた。


「私は、旅をしていたんです」


まだ長い夜、NO NAMEの声が静かに囁かれた。






   

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