運命の女神 | ナノ
20011/4
「さあ、どこだろうね」
眞悧の手が私を掴むと同時に近づいた彼の顔、彼の瞳が私を除いては、私は瞬きせずに見つめ返す。私が求めているのは、彼じゃない。彼がいくら私に呪いをかけようが、私は彼を求めない。だから私は愛を得れない、愛を抱くことも許されない。
「桃果を返して」
「彼女は君のために閉じ込められたんだ、僕にね」
大切な子だった。私を友達といい、名前を読んでくれた。それが呪いだと知らずに、私の名前を呼んだ子だった。神から与えられた私の罰は、世界が終わる日まで大切な子を作ってはいけない、名前を呼ばせてはいけない。私はその罰を知っていたのに、桃果を大事にした。初めてだったんだ、友達という、絆が、愛が。
「返して」
彼女が私のために閉じ込められたのならば、私は彼女のために、彼のために死んでもいいんだ。それが運命だったんだ、私は最初の罪を犯したときから決まっていた。親友に、偽りの親友に罰せられたあの日から、決まっていたんだ。
「返せ!!」
凛、と響いた声を同時に身体から発せられる光に眞悧の身体は弾かれる。徐々に光へと変わりつつある姿の中、私は微笑んで見せた。
「私は貴方のものにはならない」
そして貴方は永遠の呪いであらなければならない。どんなにあがいたって、その運命からは逃れられないのだ。逃れさせはしない。
「桃果、待っていて」
「君は・・・必ず、この呪いから逃れられない」
私が追放された日、私はあの日記を持って一人歩いていた。孤独な道を、孤独な運命を。それを変えたのは彼女だ、彼女は言った。
「友達になろう」
その言葉に私は涙が溢れたのだ。
「貴方の名前は?」
自分の名が呪いを持つことを知っていたのに、私は放った。自分の名を、語った自分のことを、授けたこの日記を。
「私の名前は」
名前、はNO NAME
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